第95回コラム 「先使用権の確保法」

 今回は、都営浅草線/日比谷線「人形町駅」から徒歩2分の所に鎮座する、三光稲荷神社(さんこういなりじんじゃ)(中央区日本橋堀留町2-1-13)をご紹介します。元禄2年(1687)の『江戸惣鹿子』によれば、歌舞伎役者の二代目関三十郎の邸内に祀られたとのこと。その後、田所稲荷が合祀され、現在に至るとのこと。行方不明になった猫が多々帰ってきたということで「失せ猫祈願」でも有名とのこと。(由緒書より)

 *1歌舞伎役者の二代目関三十郎

【参道入り口】
 
【正面】
 
【神額】
 
【拝殿】
(筆者撮影)

 皆さんの会社において、障害となる特許発明を回避することがあると思います。言わずもがですが、回避策を考えた場合、回避策を特許出願等を行うと思います。回避策が他人の特許出願等によって実施出来なくなることを予防するためです。
 例えば、断面六角形鉛筆の特許権があったとします。
 回避策として、断面三角形の鉛筆を考えたとします。第三者が同じ断面三角形の鉛筆の特許出願を先に出願することにより、自己実施ができなくなることを防止するためです。

 しかし、諸般の事情により、特許出願をしない場合もあると思います。特許出願をしない場合、公表して公知化するか、公知化しない場合、先使用権を主張できる証拠を残すことが将来のリスクを低くするために必要です。
 公知化する場合、自社のHP等において公表することが良いでしょう。自社HPは私文書の類いであるので、掲載した日時、掲載内容、及び掲載内容が改ざんされていないことを立証できる資料を残しておくことが重要です。ノウハウを含んでいる場合、当該ノウハウを何処まで開示するか慎重に検討する必要があります。
 先使用権を主張する場合、以下について考慮する必要があります。
 先使用権(特許法第79条)の要件は下記の通りです。
 ①特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をした者から知得して
 ②特許出願の際現に
 ③日本国内において
 ④その発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者であって
 ⑤その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において
 ⑥その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する
 ①に関しては、回避策創出の過程や回避内容を理解できる資料が必要であると思われますので、発明の過程(開発経過)を示す文書等、開発会議録等が有効と思われます。
 議事録には、何時、何処で、誰が、何を、どのようにという、所謂5W1Hを記載することが重要です。最近は、社内メールで議事録を代用することもあろうかと思われます。社内メールであっても、5W1Hは手抜きすることなく記載することが重要です。手抜きの例として、例えば、参加者がメールの宛先であったとしても、参加者の項目にメール宛先の氏名を記載して下さい。
 開発の過程(開発着手から完成)を示す文書等の例として、下記があります。
 文書名は、各社の相当する文書名に置き換えて下さい。
   研究ノート、技術成果報告書、設計図、仕様書
 事業化に向けた準備が決定された段階
   事業計画等
   名称を問わず、事業化決定会議の議事録(5W1Hを記載)
 事業の準備の段階
   設計図、仕様書、見積書、請求書、納品書
   (上記において製造設備を含む。)
 事業の開始及びその後の段階
   工場の作業日誌や製造記録、原材料の入手記録、販売の伝票
 四角形鉛筆の例に当てはめると、回避策案出会議の議事録(5W1H)、設計図、製造機械の発注書・受領書、製造日報、製造を外注する場合は発注書・受領書、及び販売報告書(受注書、納品書)等が必要と思われます。
 議事録には、誰が四角形鉛筆を提案したか、当該四角形鉛筆を回避案として決定したことが記載されていることがポイントです。

 証拠能力を高める手段
 上記した書類や電子情報は私文書であるため、証拠能力を高めるために、タイムスタンプ、電子署名、電子公証等の手立てを取ることが好ましいです。
 皆様においてご参考になれば幸いです。

以上