第82回コラム 「デコレーションケーキの創作は如何に模倣を防ぐべきか」

 今回は、エレキテル(静電気発生機)で有名な、平賀源内の墓所(台東区橋場2-22-2)をご紹介します。同墓所はかつて同所にあった総泉寺に設けられたとのことですが、同寺が板橋に移転した後もそのまま残されたとのことです。1943年(昭和18年)に国の史跡に指定されました。

【墓所正面】
【顕彰会石碑】
【墓石】
【史跡碑】(筆者撮影)

 2022年12月15日インターネットにおいて、オリジナルのフラワーケーキが、有名店に模倣されたとの下記の記事が掲載されました。幸い、有名店が模倣を謝罪すると共に、販売を中止して事なきを得たようです。
 2022年12月8日に投稿された原文に寄れば、「パクリとはいいたくないけれど・・とても悲しいことでした。」とあるので、中止までは求めていないと理解できます。

(出所:https://www.j-cast.com/2022/12/15452484.html)

 しかし、需要者が欲しい(良い)と思う商品やサービスは、模倣されることは言うまでも無く常識です。
 無防備で創作品を公表した場合、原則、模倣されても文句は言えないと思います。
 オリジナルのフラワーケーキの写真を投稿した義山氏は、何の権利に基づいて主張しているのでしょうか。
 フラワーケーキの外観は技術的思想ではないので特許、実用新案の対象ではなく、意匠出願又は商標出願もしていないようです。
 そうすると、著作権又は不正競争防止法第2条1項*1でしょうか。
 しかし、義山氏はフラワーケーキの作製を指導し、販売はしていないようですので、不正競争防止法ではないと思われます。
 そうすると、著作権でしょうか。
 著作権の保護を受けるには、著作物である必要があります。
 著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文学、学術、美術又は音楽の範囲に属するものです。
 フラワーケーキは、思想又は感情の創作的表現であると思われます。そうすると、美術の範囲であるかが争点になり、決着まで相当の時間と費用が掛かると予想されます。
 一般論として、今回の件は、道義上の問題はあるものの、法的な根拠は薄いと思われます。
 そうすると、ケーキ等の食品の形状を真似されないようにするにはどうすれば良いでしょうか。
 私は、意匠権が適していると思われます。実際も下記グラフに示すように、何件か出願されています。

(意匠登録第1682258号)
(意匠登録第1696712号)

 ケーキは、種々のデザインが考えられますので、主要パーツの配置を部分意匠で出願し、バリエーションの意匠を関連意匠出願して保護範囲を拡張することが有効と思われます。
 例えば、以下のロールケーキに関する事例があります。
 模倣されたくないと考える事業者は、発表前に知的財産権による保護をすることをご検討下さい。

【基礎意匠】 【関連意匠1】 【関連意匠2】
【意匠登録第1733140号】 【意匠登録第1733223号】 【意匠登録第1733224号】

 ケーキを販売しない義山氏のような事業者は、著作権表示をしておくことも一策であると考えます。

*1
不正競争防止法第2条第1項
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは
渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
三 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

以上

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