第77回コラム 「商標のタダ乗り抑止について」

 今回は、先月ご紹介した白鬚神社の近くに祀られている子育地蔵堂(墨田区東向島3-2)をご紹介します。当子育地蔵堂は、文化年間(1804-1818)の隅田川堤防改修中に得た石造りの地蔵尊を、庚申塔のあった当地に祀ったことに始まるとのこと。白髭神社に至る300mほどの小径は、旧「墨堤の道」の名残とのこと(すみだの史跡文化財めぐりより)。最近、リニューアルされ、綺麗に整理されました。向かいの団子屋さんが美味しいです。

【子育地蔵堂遠景】
【地蔵堂正面】
【地蔵堂】
     【庚申塚】(筆者撮影)

 「自治体の「ゆるキャラ」が、無断使用されるトラブルが各地で起きている。」との記事が7/16(土) 6:33配信の読売新聞(yahooニュース)に掲載されました。
 具体的案件は、徳島県のゆるキャラ「すだちくん」です。
 そこで、「すだちくん」に係る登録商標を調べてみました。
 徳島県は「すだちくん」に関し、下記2件の商標権を持っています。

【無断使用事例】
 無断使用者は、下の写真のように、「無料案内所」の文字と共に「すだちくん」のイラストを変型した近似したイラストを表示しています。
 業務は、観光に関する無料案内所のようです。
 旅行案内は、第39類です。
 商標が類似すると仮定した場合であっても、指定商品・役務において非類似であると思われ、現在取得している商標権の効力は及びません。
 無断使用者は、商標登録されていることを知らないか、第39類が商標登録されていないことを調べ、商標権侵害でないことを確認した上で使用を開始したものと思われます。
 しかし、近似したイラストを表示した背景には、「すだちくん」の周知性、公的な信用を利用する狙い、所謂「タダ乗り」があるように思われます。

【問題点】
 では、トラブルとは何でしょうか?
 「すだちくん」に近似したイラストを許可無く使用されたことによる訝りでしょうか。それとも無断使用者によって徳島県又は許可を受けて使用している事業者の信用を毀損されるような行為をされているのでしょうか。
 基本は話し合いで解決することが最良であると思われますが、トラブルということは、話し合い解決できないということであると思われます。
 そうすると、トラブルを解消するには、法的手段に頼らねばなりません。
 前述したように、徳島県の商標権を侵害していないと思われます。
 「すだちくん」のイラストに基づく著作権侵害で差止できる可能性はあると思われます。
 しかしながら、著作権侵害は裁判になると思われ、費用と時間がかかることを承知で行わねばなりません。
 そこで、商標権を取得することが効果的であると思われます。
 徳島県は、「すだちくん」の商標権を役務に関しては取得していませんので、所定の役務を指定して商標権を取得すべきです。
 商標権侵害は非親告罪(法78条)です。裁判費用を考慮すれば、多くの区分を指定したとしても割安感があると思います。
 サービスマーク登録制度は平成3(1991)年に導入されました。
 徳島県は、第4986799号の商標出願時、又は商標権取得後所定の役務を指定した商標登録をする必要があったと思われますが、現在でも遅くはありません。

 このような事態は、地方自治体に限らず、商標を使用している者には共通する課題であると思いますので、「タダ乗り」を効果的に防ぐ手立てを先回りして講じる必要があると思います。

【ご参考】
徳島県HP 徳島県マスコット「すだちくん」が、商品にも無償で使えるようになりました!
https://www.pref.tokushima.lg.jp/ippannokata/kurashi/chihososei/2013040400097

以上

商標・意匠登録の事前保護に

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