第61回コラム 「権利行使時の留意点」

 今回は、都営地下鉄小川町駅の近くの神田スクエア敷地内に鎮座する豊川稲荷(千代田区神田錦町2-2)をご紹介します。本神社は、「千代田の稲荷」によれば、現在は町会関係者によって飾り付け等が継続され、地域の守護神として人々に広く信仰されているとのことです。ガラス越しに見える一階の倉庫には、神田祭用の神輿が保管されています。

【正面】
【神額】
【社殿】
【子供神輿】
(筆者撮影)

 今月は、以下に紹介する意匠権侵害判決を通して、知財権を行使する際の留意すべき点を再認識したいと思います。

 まず、事件の概要を説明します。本事件は、意匠権侵害で、知財高裁まで争った事件です(意匠登録第1556717号(以下「本件意匠権」という。))。
 本件意匠権は、意匠に係る物品を自動精算機とし、ディスプレイ部分に関する部分意匠です(下図1~3参照方)。イ号に係る物品は、タッチパネル式券売機であり、意匠は下図4~6です。

 両者の主張の要部を下記します。

●裁判所の判断
下記公知意匠A~Cを挙げ、基本的態様および具体的態様①の創作性を認定せず、具体的態様における②~④に創作性を認定しました。
その上で、イ号との類否判断をし、結果、非類似であると判断しました。

 ●権利を行使する際の留意点
 上記判例より、従来から指摘されていたことですが、以下の二点について強く感じた次第です。なお、特許を例に記載しましたが、実用新案登録、意匠登録、または商標登録についても同様です。
 ①自社の権利の有効性を検討すべきです。特に、一発で特許査定になった場合、または進歩性違反の拒絶理由通知を受けずに特許された場合には慎重な調査が必要であると考えます。もっとも、出願前に十分な調査を行っている場合は除かれます。
 ②特許の無効理由がないことが確認できた場合であっても、有効な権利範囲を検討すべきです。今回紹介した判例のように、公知技術等によって、権利範囲が狭まることが想定されるためです。

●本件意匠権
   図1斜視図          図2正面図       図3右側面図

●被告製品 券売機 「VALTEC TK-1920」 
 図4被告製品      図5上角部拡大図        図6下角部拡大図

●先行意匠
  先行意匠A         先行意匠B          先行意匠C
韓国意商公報30-0600546  韓国意商公報30-0627528   韓国意商公報30-0705951

●事件表示
知財高裁 令和2年(ネ)第10053号
原審・東京地方裁判所令和元年(ワ)第16017号

以上

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