知的財産における裁判と証拠について

知的財産の裁判で証拠が判決の行方を決める大きなポイントになることは当然ですが、
状況や様々な要因などからも判決に影響してくることもあります。

同じ様な問題でも異なる判決が出たりすることもあり、少し判例をみてみました

身近なものでの裁判

一般的に話題となった裁判で見てみると

例えば、

「面白い恋人事件」  「フランク三浦事件」 など

どちらも、商標に関するものですが

「面白い恋人事件」は、
北海道のお土産で有名な石屋製菓の「白い恋人」を、吉本興業がパロディ化して販売した「面白い恋人」に対して商標権侵害を石屋製菓が起こしたもの。 こちらに関しては、「デザイン変更、販売地域限定」にする事で、賠償金無しで和解が成立しています

「フランク三浦事件」
逆に既に商標登録されていましたが、パロディ元とみられるブランドの「フランクミューラー」より 商標登録無効審判 を起こされました。こちらは、商標登録適法として棄却されています

この2例では、同じ商標問題でも、「類似品となるか否かの違い」、「明らかに異なる物と違いが認識できる」等
によって、判決が異なっていますね。

では「名称やデザイン」など商標や意匠ではなく、特許侵害など「証拠の有無」が判決の要素として大きいため
如何に証拠を集めて提示できるか、集められるかが重要なのですが、「特許侵害」もしくは「先使用権」となる証拠を
自社のみでは示すことは、中々困難な事となります。

査証制度

この様な点を踏まえ、2020年の特許法改正により、「査証制度」が創設されました。
査証制度は、侵害訴訟を行う際に、相手方からも証拠を収集することができる制度です。
米国のディスカバリーほど、強制的な制度ではありませんが、相当の条件が整えば相手方は応じる必要があります。

元々、中小企業などの特許が侵害された際、

・その証拠集めの難しさから訴訟が行えない
・証明できない

といった事から制度化されたものですが、制度化以前も、

「文書提出命令」
「生産方法の推定」

など法整備されていました。

しかし、「ソフトウェア」など、立証する事が困難なものが増え、
相手方から証拠を集めないと立証が難しくなったために制度化されたものですが、
侵害訴訟に査証制度を利用するには一定の要件があるようです。

特許法(査証人に対する査証の命令) 第105条の2 における「査証制度を利用する要件」を要約すると

・「侵害行為を証明する事が必要」であり
・「特許権侵害の可能性があると疑う相当の理由」があり
・「査証以外では、侵害を証明する証拠を集めることができず」
・但し、「査証実施は相手方の負担が重くなりすぎない事」

といった要件となるようです。

逆に相手方の立場では査証を受けざる得ない時に、侵害していない証拠が必要になってきます。
自社の技術などで特許とは異なる、もしくは特許申請以前から持つ技術と証明するため、
先使用権を証明する事が侵害行為と見なされないための証拠を残して置く事が重要です。

普段から製品化、特許申請していない技術・アイディア、研究内容・結果を残す事で、
自社の正当性を示すことになりますので、電子公証サービスなどを利用して、
日々重要情報を証拠となる様に残す事が必要ですね。

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