第53回 「タクシー業界も知財を強みに」
今月は、墨田区立川3-18-2にある元徳稲荷神社を紹介します。本元徳稲荷は、三河岡崎に所在した川村徳右衛門が、江戸に転居後も邸内に氏神として祀っていた社です。明暦三年の江戸大火後に邸内から移転したことにより、元徳右衛門内に所在したとのことで、元徳稲荷と称されたといわれています。(余談ですが、我が生家の屋号も「徳右衛門」でした。)
【元徳稲荷正面】 | 【神額】(筆者において撮影) | 【地図】 |
*1:明暦3年旧暦1月18日から20日(1657年3月2日 – 4日)までに江戸の大半を焼いた大火災。江戸城天守も焼失し、その後再建されていない。
今回は、2020年07月にTV、新聞等で報道された、極めて珍しいタクシー業界の商標権侵害事件を紹介します。
報道によれば、香川県琴平町に所在する琴平バス株式会社(以下「琴平バス」という。)が、高松市に所在する有限会社空港サービス(以下「空港サービス」という。)を商標権侵害で高松地裁に提訴したということです。
早速、J-Plat-Patを使って琴平バスの商標権を調べてみました。登録済み及び出願中を含めて10件ヒットしました。
今回提訴した商標権に係る商標は、「うどんタクシー」(標準文字)です。
指定役務:第39類 車両による輸送,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ
登録番号:第4789305号
登録日:平成16(2004)年 7月 23日
出願日:平成15(2003)年 8月 4日
琴平バスは、2003年8月から「うどんタクシー」のサービスを開始しています。
サービスの内容は、うどん有名店をタクシーによって巡り、車内では、運転手さんから、うどんの歴史、文化、食べ方、注文のシステム等、うどんに関する「うんちく」のレクチャーや、観光の案内を受けられるというものです(下記HPコピーを参照)。本サービスは、各種メディアで紹介され、好評のようです。
琴平バスは、このサービス内容を、商標「うどんタクシー」として見える化し、商標権化した点で、とても良い経営戦略、知財戦略であると考えます。タクシー業界は、知財から遠い存在と思われますが、知財とは無縁ではないことは明かです。「先んずれば人を制す」、「知財の見える化」の重要性を再認識した次第です。
一方、空港サービスは、詳細は不明ですが、「うどんタクシー」の名称を使って営業をしているようです。同社は、恐らく、商標調査もせずに、好評な「うどんタクシー」を用いて営業をしたのではないでしょうか。善意に解釈すれば、「うどんタクシー」は一般名称化しているので商標権の効力は及ばない(商標法第26条)と考えたのかも知れません。確かに、普通名称「うどん」と「タクシー」の結合商標であるため、そのように考えることも出来なくはないですが、少数意見と考えます。採用前の商標調査の重要性を、改めて認識した次第です。
以上