第41回 「平成31(令和元)年特許法等の一部を改正する法律」が特許戦略に与える影響について

今回は、水道橋駅東口の直ぐ近くにある三崎稲荷神社を紹介します。三代将軍家光が参勤交代の制度を定めたとき家光自ら参拝したことがきっかけで、参勤交代による江戸入りの際、諸大名は必ず参拝するようになり、「清めの稲荷」と称されたそうです。

令和元年特許法等の改正が、衆参両院において全会派の賛成で可決され、本年 5月17日に公布されました。
今回の改正の目玉は、特許法における査証制度と、意匠法における保護対象の拡充です。これらの改正が、今後の知財戦略に与える影響について検討したいと思います。
今回は、特許法改正に焦点を当て検討してみました。

特許法においては、査証制度の創設と損害賠償額算定方法の見直しです。
査証制度とは、製法特許等の侵害の立証のため、専門家が証拠収集を行い、裁判所に報告書を提出する制度です。

査証制度導入の背景は、下図に示すように、物の製造は、工場内において行われることから、特許が物の製造方法である場合、特許権者が特許発明方法の証拠を把握することが困難なため、特許権侵害訴訟を提訴できないケースが多いためです。よって、現在の特許戦略は、「製造方法は侵害の発見が困難」との認識に基づいて構築されていると推測します。
現行制度においても、書類提出命令(第105条)等ありますが、文書のみでは確認できない事項もあろうかと思います。また、意識的に文書を作成しない場合もあるかと思われます。
査証命令が出される要件は下記の6つです(第105条の2)
① 特許権侵害訴訟/専用実施権侵害訴訟提訴後における申立てであること
② 相手方が書類等を所持・管理していること
③ 立証のため証拠収集が必要であること
④ 侵害したことを疑うに足りる相当な理由があること
⑤ 他の手段では証拠収集ができないと見込まれること
⑥ 相当でない(負担が不相当等)とは認められないこと
上記④侵害したことを疑うに足りる相当な理由を立証することも、相当、困難ですが、疎明程度で足りると推測されるので、侵害訴訟提起のハードルは低くなったと思われます。

今後は、「製造方法は侵害の発見が困難」との認識から、「製造方法は侵害発見が可能」に改める必要があると考えます。更に、損害賠償額算定方法の見直しにより、損害額も従来よりも高額になることが想定されます。
よって、従来以上のリスク管理をする必要があります。例えば、工場内で他人の特許発明を実施する場合、特許発明を無効にできる公知資料等を準備した上で実施する等、従来よりも厳しいリスク回避策が必要になると考えます。

また、発明を出願せずに秘匿する場合であっても、第三者が出願し、特許取得することを想定し、先使用権(第79条)の証拠固めをしっかり行う必要があると考えます。特に、実施の時期については、可及的に早い時期が採用されるよう、取締役会の決定事項と発明の実施内容の関連性が明確になるようにする等の対策が必要であると考えます。

損害賠償額算定方法の見直しは、下記2点です。何れも損害賠償額が高額になる方向の改訂です。
①権利者の実施・販売能力等を超える部分の損害を認定可能にした
②相当実施料算定の増額
①は、侵害者が販売した侵害品のうち、賠償が否定されていた部分について、侵害者にライセンスしたとみなして損害額に加算できるようにする(下記黄色分部分)。
②は、相当実施料による算定において、特許が有効であり侵害されたことが裁判で認定されたことを考慮できる旨の規定です。

以上

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