第22回 「自撮り棒」

事務所周辺を散策すると、小さな神社が多いことに気がつきます。今回はその1つである講武稲荷神社をご紹介します。この神社の名の由来は、この地に江戸幕府の武芸訓練機関及び訓練所であった講武所があったことからつけられました。場所は裏秋葉原というべきところにあり、ほんの20~30メート離れると、メイドカフェ等々秋葉原カルチャー街があります。江戸時代の地図と比較すると、敷地は大幅に縮小されましたが、位置的には殆ど同じです。

さて今回は、特許権等の維持年金支払いについて考えたいと思います。
この話題の発端は「自撮り棒」です。

ご存じのように、「自撮り棒」は我が国日本において、ミノルタカメラの従業員によって発明され、日本では実用新案出願されましたが権利化されていません。下表1に示すように、米国には1984年に優先権主張出願され、翌年の1985年に特許されました。
しかし、年金不納により1993年に失効しました。本来2002年迄有効なところ、7.5年次の年金を納付しなかったためです。

ご参考に米国特許のクレーム1を下記に記します。
「1. A telescopic extender for supporting a compact camera, comprising: telescopic rod means collapsible and extendable along a predetermined axis;
a grip firmly connected to one end of said telescopic rod means in a manner not to rotate relative to said telescopic rod means, said grip being capable of housing therein said telescopic rod means when said telescopic rod means is completely collapsed;
a head member firmly connected to the other end of said telescopic rod means in a manner not to rotate relative to said telescopic rod means;
a screw member supported by said head member so as to be rotatable about an axis which is perpendicular to said predetermined axis, said screw member being fittable into a screw hole provided on a camera body for firmly attaching said head member to said camera body; and
preventing means provided on said telescopic rod means for preventing said telescopic rod means from rotating relative to said grip and head member.」

結構広いクレームですね。現在販売されている自撮り棒は本クレームに含まれるのではないでしょうか?
また、被引用が22件も有りますので、後願の自撮り棒はこのミノルタカメラの特許によって拒絶されたのではないでしょうか?
この発明はミノルタカメラによって実用化され、1983年にエックステンダーなる商品名でコンパクトカメラ用として発売しましたが、あまり売れなかったようです(写真参照)。コンパクトカメラといってもまだまだ重く、長尺棒の先端に装着して写真を撮ることは、プロレスラーならともかく、一般人には大変困難なことだったと思われます。

また、同社は1992年に、ハネウエル社とのオートフォーカスに関する特許侵害訴訟において、当時のレートで165億円もの巨額の損害賠償の判決が出された直後の時期でした。
当然の事ながら、特許権維持の検討会において、「放棄」の結論になったと推測します。
この時代を振り返ってみると、チャゲ・アスの「YAH YAH YAH/夢の番人」、サザンの「エロティカ・セブン」や松任谷由実「真夏の夜の夢」がヒットし、ジュリアナ東京の最盛期でした。この時代、ウォークマンに代表される携帯音楽機器は出現していましたが、現在の携帯情報端末の発展は誰が予想出来たでしょうか?巨額損害賠償問題が無くとも放棄されてのではないでしょうか?
しかし、テープレコーダーの小型化・軽量化の変遷を考慮すると、カメラの急速な小型化・軽量化も予想出来たような気がしないではありません。
特許権等の維持見直しは、どこでも実行していると思われます。古いデータですが、巨人IBMは、下図に示すように米国特許について、4年毎の維持年金支払いタイミングに合わせて維持特許の棚卸しを行い、維持特許を大幅に減しています。

御社においても、当然、維持特許の見直しを行っていると思います。苦労して取得した特許権等であるにも拘わらず、放棄することは切なく、かつ、悩ましい問題だと考えます。
そこで、権利存続検討に用いる評価を下表2に纏めましたのでご紹介します。
原則的に、全てA又はBランクは、権利維持です。Cが1又は2個混じっても維持する場合があります。全てDの場合は、原則放棄です。
営業的視点は営業部門に評価頂き、自社特許について認識を深めてもらいます。
月並みの評価法ですが、皆様のご参考になれば幸いです。

最後に、自撮り棒を使用する際は、周囲への気配りをお忘れ無く!!

以上

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