第125回コラム 「特許権が消滅しても安心できない事例」

今回は、東京メトロ銀座線・半蔵門線「三越前駅」A6出口から徒歩約2分に鎮座する薬祖神社(中央区日本橋室町2-5-8)をご紹介します。

同社は、薬の神様である大己貴命(おおなむちのみこと)(大黒様)と少彦名命(すくなひこなのみこと)が祀られています。

昭和4年(1929年)に事務所建物の屋上に薬祖神社(初代社殿)が造営され、平成28年(2016年)9月28日福徳の森に三代目の薬祖神社が遷座され、現在に至るとのこと。

【正面入口】
【神額】
【社殿】
【由緒書き】

(筆者撮影)

今回は、LINEヤフー株式会社が被告になった特許権侵害に基づく不当利得返還請求事件の判決(原審東京地裁令和6年(ワ)第70281号、控訴審知財高裁令和7(ネ)10084)に基づく教訓を紹介します。

本事件における原告は、当初の特許権者である株式会社サビエンスと、当該特許権の譲渡を受けたプラグインフリー・パテント・ホールディング株式会社(以下「プラグインフリー」という。)です。
プラグインフリーは、本件発明の発明者である蓮池曜氏が代表者を務め、事業内容が「特許権の保有、並びに関連する業務」であるので、パテントトロール的性質を有すると思われます。(https://www.pluginfreepatentholding.com/#p03)

特許権者であるプラグインフリーは、特許権が満了した翌年に、訂正審判を請求し、当該訂正審判が確定した後、プラグインフリー等は本件不当利得返還請求事件を提訴したようです。

このように、希有な例ですが、利益が大きな事業に関する技術においては、特許権が消滅した後、侵害訴訟を提起される可能性があるので注意が必要です。

以下簡単に本件特許の経緯及び内容を簡単に紹介します。

【本件特許の経緯】

   特許第5475856号

   発明の名称   「画像表示方法及び画像表示用プログラム」

   出願日     平成24(2012)年11月26日(特願2012-257101)

   登録日     平成26(2014)年02月14日

   特許権移転日  平成27(2015)年02月09日

   特許権消滅日  平成05(2022)年04月17日

   訂正審判請求日 令和05(2023)年12月20日(請求項2~4:実質は請求項2のみ)

   訂正審判審決日 令和06(2024)年04月24日

【本件発明の概要】

本件各発明は、Webブラウザの表示領域よりも大きい画像をサーバからダウンロードしてビューアに表示する方法である。

【目的】

画像の移動速度を速くすることを可能にすること。

【争点】

構成要件1C、1E、1F、2C、2E及び2Fにおける、「各枠要素の原点の(移動すべき)座標を(それぞれ)演算」が最大の争点になりました。

原告は、「演算しているはずだ」との推定に基づく主張をし、被告は自社の実態に基づいて反論しました。

結果、裁判所は、「演算」に係る具体的な主張立証がないので被告製品においては演算していないと認定しました。
また、訂正要件を満たさないと判示しました。

【特許時の請求項】(筆者において「演算」に表示変更しました。)

 【請求項1】(訂正なし)

1A Webブラウザの画像を表示する表示領域よりも大きい画像を分割し該Webブラウザの表示領域に少なくとも一部が入る分割画像を該Webブラウザの表示領域に表示する画像表示方法において、

1B 該方法は、Webブラウザの表示領域に少なくとも一部が入る分割画像を含む、Webブラウザの表示領域に対し所定の位置関係にある、画像全体に対して限定された範囲の画像領域に含まれる分割画像を、個々に当てはめて表示する表示領域に相当する複数の枠要素の配列をWebブラウザに設定し、該各枠要素に、該当する位置の分割画像をそれぞれ当てはめて表示しまたは表示できる状態にし、かつ、Webブラウザの表示領域に対する画像の相対移動が指示された時に、Webブラウザの表示領域に対する枠要素の移動すべき位置を演算して該位置に枠要素を移動する方法であり、

1C 該方法は、前記複数の枠要素全体でブロックを構成し、画像の相対移動が指示された時に、Webブラウザは、該Webブラウザの表示領域の原点に対する該ブロックの原点の移動すべき座標を演算し、該演算により求められたブロックの原点の座標に基づき、前記各枠要素の原点の移動すべき座標をそれぞれ演算し、該演算により求められた座標に各枠要素の原点をそれぞれ移動することにより、前記画像の相対移動を実現する方法であり、

1D 該方法において、

1E WebブラウザはHTMLファイルに記述されているJavaScript(登録商標)により、Webブラウザの表示領域の原点に対するブロックの原点の座標と、該ブロックの原点に対する各枠要素の原点の座標を演算して初期表示を行い、

1F 該初期表示後に、Webブラウザの表示領域に対する画像の相対移動が指示された時に、WebブラウザはHTMLファイルに記述されているJavaScriptによりWebブラウザの表示領域の原点に対するブロックの原点の移動すべき座標を演算し、Webブラウザは該ブロックの原点の移動すべき座標と前記ブロックの原点に対する各枠要素の原点の座標とに基づき各枠要素の原点の移動すべき座標をそれぞれ演算し、該演算により求められた座標に各枠要素の原点をそれぞれ移動することにより、前記画像の相対移動を実現する

1G 画像表示方法。

【請求項2】(特許時)

前記ブロックがHTMLの文法で定義される<DIV>タグを使用して設定されている請求項1に記載の画像表示方法。

【訂正請求項2】

2A Webブラウザの画像を表示する表示領域よりも大きい画像を分割し該Webブラウザの表示領域に少なくとも一部が入る分割画像をサーバから優先的にダウンロードして該Webブラウザの表示領域に表示する画像表示方法において、

2B 該方法は、Webブラウザの表示領域に少なくとも一部が入る分割画像を含む、Webブラウザの表示領域に対し所定の位置関係にある、画像全体に対して限定された範囲の画像領域に含まれる分割画像を、個々に当てはめて表示する表示領域に相当する複数の枠要素の配列をWebブラウザに設定し、該各枠要素に、該当する位置の分割画像をそれぞれ当てはめて表示しまたは表示できる状態にし、かつ、Webブラウザの表示領域に対する画像の相対移動が指示された時に、Webブラウザの表示領域に対する枠要素の移動すべき位置を演算して該位置に枠要素を移動する方法であり、

2C 該方法は、前記複数の枠要素全体でブロックを構成し、画像の相対移動が指示された時に、Webブラウザは、該Webブラウザの表示領域の原点に対する該ブロックの原点の移動すべき座標を演算し、該演算により求められたブロックの原点の座標に基づき、前記各枠要素の原点の移動すべき座標をそれぞれ演算し、該演算により求められた座標に各枠要素の原点をそれぞれ移動することにより、前記画像の相対移動を実現する方法であり、        

2D 該方法において、        

2D1 閲覧者が前記Webブラウザから前記サーバに対して画像の閲覧指示をすると、前記Webブラウザは、前記サーバに対して前記閲覧指示に対応するHTMLを要求する指示を送信し、        

2D2 前記サーバは、前記Webブラウザからの要求に従い、画像表示に必要な演算を実行するJavaScript(登録商標)を記述した前記HTMLを前記Webブラウザに送信し、        

2D3 前記Webブラウザは、前記HTML及び前記HTMLに記述された前記JavaScriptを受信するより前の状態においては、前記Webブラウザの画像を表示する表示領域内に表示する前記分割画像を特定する演算を行うことがなく、        

2D4 前記Webブラウザは、前記サーバから送信された前記HTML及び前記HTMLに記述された前記JavaScriptを受信した後の状態において、        

2E 前記サーバから送信された前記HTMLに記述された前記JavaScriptにより、Webブラウザの表示領域の原点に対するブロックの原点の座標と、該ブロックの原点に対する各枠要素の原点の座標を演算して初期表示を行い、

2F 該初期表示後に、Webブラウザの表示領域に対する画像の相対移動が指示された時に、WebブラウザはHTMLファイルに記述されているJavaScriptによりWebブラウザの表示領域の原点に対するブロックの原点の移動すべき座標を演算し、Webブラウザは該ブロックの原点の移動すべき座標と前記ブロックの原点に対する各枠要素の原点の座標とに基づき各枠要素の原点の移動すべき座標をそれぞれ演算し、該演算により求められた座標に各枠要素の原点をそれぞれ移動することにより、前記画像の相対移動を実現し、        

2F1 前記画像の相対移動に伴い前記Webブラウザの表示領域から離れる前記分割画像に該当する位置から前記枠要素を削除し、前記Webブラウザの表示領域に近づく前記分割画像に該当する位置に前記枠要素を追加して画像に対する前記枠要素の配列の位置を変更し、追加する前記枠要素に、該当する位置の前記分割画像を当てはめて表示しまたは表示できる状態にし、        

2F2 前記ブロックがHTMLの文法で定義される<DIV>タグを使用して設定されている

2G 画像表示方法。

以上