第93回コラム 「巧妙化する模倣手口」

 今回は、東京メトロ「日本橋駅」より徒歩約6分、警視庁中央警察署の斜め向かいにある、大原稲荷神社(東京都中央区日本橋兜町11-3)をご紹介します。この地は古く日本橋川より、楓川に通ずる運河要衝の地であり、海運・芸能の神として信仰され、関東大震災後、かつて海運橋以南の広大な境内は、区画整理等で縮小されました(東京都神社名鑑より)。

【正面】
 
【神額】
 
【再建寄付者額】
(筆者撮影)

 従来、安かろう、悪かろうであった国々における模倣品が、OEM(Original Equipment Manufacturing)や模造品製造によって製造技術を向上させ、製造品質が向上し、最近は本物と区別がつかいない程精巧な模倣品になりつつあると言われています。
 また、従来は、フルコピーであった商標や意匠の模倣も巧妙化していると指摘されています。
 模造品は、品質やサービス面で真正品と異なるため、真正品事業者のイメージダウン等につながることから、模造品対策は重要です。
 模倣品業者は、下記事例に示すように、本物と誤認させて購買させるため、フルコピー商標や同一意匠の商品を提供してきました。

事例1:スパイク鋲(商標権)
(商標登録第4376378号)
事例2:ペット用マッサージ具(意匠権)
(意匠登録第1610859号)

(出所:財務省知的財産侵害物品(コピー商品等)の取締り
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/index.html

 しかし、近年は、商標は似ている印象であるが、類似するかしないか判断が困難な商標(以下「類否判断困難商標」という。)、又は当該類否判断困難商標を商標登録して使用する事例が増えています。
 以下は、中国における株式会社アシックスの事例です。
 同社は、皆さんがよく見かける下記商標を中国において、取得しています。

 しかし、模倣者は、下図の運動靴を、アシックス社の大凡半値で販売しました。
 模倣者は、運動靴に付したマークの商標権も取得していたようです。

(出所:知財管理Vol.72No.4 2022P453)

 模倣品に付されたマークは、登録商標と類似するといえるでしょうか。
 この場合の商標の類否判断は、極めて難しいと思われ、裁判での決着になると思われます。
 アシックス社は、模倣者の商標を、無効審判によって無効とした後、北京工商局に対し行政救済としての模倣品摘発を要請し、摘発につながったとのことです。
 この事例から明らかなように、商標権等の知的財産権を取得して安心することなく、市場における模倣品をサーチし、対策をとることが重要です。
 外国においてこのような悪意の商標が取得された場合、登録を無効化する対策が必要です。
 また、先回りして類似商標を登録しておく対策も有効であると思います。
 下記冒認商標無効・取消に要する補助金制度もあります。


●JETRO中小企業等海外侵害対策支援事業(冒認商標無効・取消係争支援事業)
  https://www.jetro.go.jp/services/ip_service.html
●東京都海外商標対策支援助成事業
  https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/josei/syouhyoutaisaku/

 いずれにせよ、このような補助金制度を活用して地道に対策を取ることが重要であると思います。

以上