第90回コラム 商標法改正(自己氏名の登録要件緩和)について
今回は、東武亀戸線「曳舟」駅より徒歩約4分の所に鎮座する、飛木神社(東京都墨田区押上2-39-6)をご紹介します。暴風雨の際にイチョウの枝が飛んできてこの地に刺さり、いつの間にか亭々*1(ていてい)とそびえたので、時の人が瑞兆*2であるとして稲荷神社を祀ったとのこと(すみだ観光サイトより)。
*1:高くそびえたつさま。
*2:めでたいしるし。めでたい前兆。




今回は、商標法の改正について紹介します。
2023年6月7日に、「不正競争防止法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第51号)が成立し、2023年6月14日に公布されました。公布後1年以内(意匠法の「新規性喪失の例外規定の要件緩和」に関する規定は2023年7月3日)に施行されます。
今回の改正は、商標法4条1項8号に関します。
●改正前
他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
●改正後(下線部が改正部分です)
他人の肖像若しくは他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であって、政令で定める要件に該当しないもの
改正前は、周知要件が無く、同一の他人の氏名が存在する場合、全ての同一氏名の承諾を得なければ、商標登録を受けることができませんでした。
しかし、改正後は当該他人の氏名が周知でない場合は商標登録を受けることができます。
ここで、周知の程度が明確ではないですが、4条1項10号程度の周知度であると想定されます。
この周知度は、全国的に知られているまでの必要性はないものの,通常,一地方,すなわち,一県の全域及び隣接の数県を含む程度の地理的範囲と考えられています(審査基準)。これを図で表すと以下のようになります。


したがって、商標権取得のハードルが下がることが想定されます。
先使用権(32条)も同程度の周知性を立証せねばならず、立証は大変です
自己の氏名を用いてブランドを構築している事業者は、改正法施行後、速やかに当該ブランドを商標出願することをお薦めします。
以上