電子署名・タイムスタンプの歴史 ~なぜ、電子認証が必要になったのか?~

近年、電子化が急激に進み、必要に応じて、電子文書に「電子署名」や「タイムスタンプ」が付与されています。

今回は、「電子署名」、「タイムスタンプ」の歴史を振り返り、なぜ、こういった「電子認証」が必要になったのかを考えます。

「電子署名」の歴史

「電子署名」自体の歴史はそれほど深くありませんが、「電子署名」の根幹要素である [暗号化] は歴史が古く、紀元前 1500 年、メソポタミアで陶器の釉薬の配合を隠すために使われたのが最初の例だそうです。

その後、戦時中、敵に知られないよう、[暗号化] したメッセージでやり取りを行う軍事利用を経て、20世紀に入ると、競合他社からデータを守るという商業的な利用が増えました。

現在では、インターネット、Wi-Fi、Bluetoothなど、通信をするときには必ず [暗号化] が行われるようになりました。

その中で、どのように「電子署名」が登場してきたかというと、[暗号化] したデータが ”誰” のものなのかがわかるようにするため、[暗号化] の際に使用する「秘密鍵」と対になる「電子証明書」をつけるようになったことで、「電子署名」(Digital Signature)として活用されるようになりました。

有名なのは、メールに電子署名をつけて送信する「S/MIME」という技術です。

「タイムスタンプ」の歴史

広義の「タイムスタンプ」の歴史は古く、古代エジプトやメソポタミアでは、粘土板に日付を記録することで、出来事の「タイムスタンプ」を記録していました。

その後、中世ヨーロッパでは、公式文書や契約書に日付が付けられるようになり、文書の信頼性を確保する手段として機能しました。

コンピュータの利用が進んでいくと、電子ファイルやメール、ウェブページに「タイムスタンプ」を付与するようになっていきました。

1990年代以降、暗号技術を用いたデジタル署名とタイムスタンプの技術が発展しました。これにより、デジタル文書の改ざんを防ぎ、信頼性を保証するための手段として広く利用されるようになりました。

21世紀に入ると、ブロックチェーン技術が登場し、分散型のタイムスタンプが可能になりました。ブロックチェーンは、データのタイムスタンプをチェーンの各ブロックに記録することで、改ざんが極めて困難な仕組みを提供しています。

タイムスタンプは、古代の文書管理から最新のブロックチェーン技術に至るまで、データの信頼性と整合性を確保するための重要な技術として進化してきました。

日本の「電子署名」、「タイムスタンプ」関連の法律

電子帳簿保存法 (1998年)

決算関係書類や各種帳簿などの税務関係帳簿・書類を電子データで保存することを認めた法律

電子署名法 (2001年)

法的に有効となる「電子署名」の要件について定めた法律

e-文書法 (2005年)

法人税法や会社法、商法、証券取引法などで保管が義務づけられている文書や帳簿、請求書、領収書などについて、電子化した文書ファイル(電磁的記録)での保存も認める法律

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン (2005年)

個⼈情報の中でも厳重な保護が必要とされる患者の電⼦カルテなどの医療情報を適切に管理するた めに国が定めたガイドライン

先使用権制度ガイドライン (2006年)

特許庁が先使用権制度の円滑な利用を推進することを目的として作成したガイドライン

なぜ、「電子認証」が必要になったのか?

① 紙 ⇒ 電子 に移行する際、その文書・データが “誰” のものなのかを特定する必要があった

② 紙 ⇒ 電子 に移行する際、その文書・データが “いつ” 作成されたのかを記録しておく必要があった

③ 紙 ⇒ 電子 に移行する際、その文書・データが作成されたときから “改ざんされていない” ことを証明する必要があった