第7回 産業財産権によって広範に保護したいときどうしますか? 

大寒も過ぎ、年間で最も寒い季節になりました。
今回は、御社の商品(機構品)を確実に特許発明等の産業財産権によって広範に保護したい場合の対応について考えてみたいと思います。

結論を言えば、特許出願と意匠出願との重層的保護をお薦め致します。
意匠権の保護範囲は狭いと言われますが、本当でしょうか? 特許請求の範囲よりも、意匠の類似範囲の方が広い場合が多々あります。
特許庁のアンケート調査においても、製品企画・開発上、調査時に発見した他社の意匠に対して何らかの対策が必要になったと回答した者が8割に上り、対策が必要となったと回答した者のうち、97%は設計変更により対応しています。


出展 特許庁 なるほど、日本の素敵な製品 デザイン戦略と知的財産の事例集

次に実例を紹介致します。
特許第5014280号 特許権者:三菱電機(株)他
本発明の概要は、吸込具本体11の上面であって、継手管20に連通する吸込室15の連通口19の近傍に、第2の吸込口18を設けたことを特徴とする電気掃除機の吸込具です。
下表は、公開時と特許時のクレーム比較です。

意匠登録第第1355932号 登録日:2009.3.13 意匠権者:三菱電機(株)他

意匠に係る物品:電気掃除機用ブラシ

上記のように、特許クレームは、第2吸込口に配置した抗アレルゲンフィルタ、回転ブラシの負荷センサ、負荷センサの検出負荷に基づいて第2吸込口の開口量を調整する調整手段が構成要件として追加され、単に第2吸込口を設けたとしても、技術的範囲に属しません。
一方、意匠出願は吸込具本体の上面に第2の吸込口が形成された形態で登録されましたので、負荷センサ等に関係なく外観が類似していれば権利が及びます。この意味において、本事例の場合には意匠権の方が、実質的に保護範囲が広いのではないかと考えます。
更に保護期間においては、意匠権の方が7ヶ月半ほど遅くまで存続します。

 

この場合、特許出願の権利化を断念、又は、特許権を放棄し、意匠権のみを存続させることにより費用負担を軽減する選択も可能です。
適用範囲の制限はありますが、産業財産権を広く取りたい場合、特許出願と意匠出願の二本立てで重層的に権利取得することを考えては如何でしょうか?

次回は、特許出願と意匠出願をしたいが、費用的に出せない場合の対応について考えてみたいと思います。

以上

知的財産保護に

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