第8回 意匠登録出願へ出願変更を考慮した特許出願の留意点

前回は、特許の保護範囲が狭くなった場合、その特許権を取得すると共に分割出願をし、その分割出願を意匠登録出願へ変更して意匠権を取得することをお薦め致しました。
この手法は、機械的発明等外観が視覚的に認識出来る発明にのみ適用可能であることをご了承下さい。

今回は、この手法を安価に取得できる方法をご紹介致します。
結論を言えば、特許出願において、出来るだけ広い範囲の特許権の取得に務め、意匠権の方が広くなりそうな場合、意匠登録出願へ出願変更し、意匠権を取得します(意匠法第13条第1項)。なお、出願変更によって基の特許出願はみなし取り下げになります(同条第4項)。
意匠登録出願への変更は、特許出願の最初の拒絶査定謄本の送達があった日から3月以内であれば可能です(同条第1項ただし書)。したがって、特許出願の拒絶査定謄本の送達を受けた後、何を意匠登録出願するか?全体意匠にするか?部分意匠にするか?等慎重に検討し、決定すれば良いと思います。

しかし、単純に意匠登録出願へ変更ができるのでしょうか?
否、特許出願時に意匠登録出願を考慮した図面を使用しておかなければ、当初の特許出願の図面に表された意匠と、意匠登録出願に添付した図面との同一性が担保されず、出願日の遡及効が発生しません(意匠法第13条第6項で援用する同法第10条の2第2項)。第三者に不測の不利益を与えるからです。
したがって、特許出願時に意匠登録出願への変更を考慮した図面等の対応が必要です。
具体的には、特許出願時に以下の事項を考慮して出願することが懸命です。
(1)図面について
①ベスト:6面図(正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図)を使用する。
②ベター:2方向からの斜視図(上記6面が全体として把握可能)を使用する。
(2)明細書について
①部分意匠となる部分の用途及び機能の説明(意匠に係る物品の説明の欄に記載する必要性が高いため)。
②部分意匠となる部分の参照符号を付した説明(同上)
なお、特許出願から部分意匠登録出願への出願変更の場合、最初の特許出願に含まれていなかった図面の追加が可能な場合があります。以下に紹介する事例においては、審査において、当初図面に含まれていなかった正面図における装置の外郭線や操作ボタンの追加によって、意匠の同一性が否定され、拒絶査定になりました。しかし、拒絶査定不服審判においては、部分意匠に係る部分の同一性が認定されたことにより、部分意匠に係る部分以外の図面の追加が認容されました。

新たな図面の追加が認容された事例 意匠登録第1380985号
意匠登録に係る物品:マルチメディア再生装置
[出願の経緯]

[特許出願時の外観に関する図面]


特願2003-149924(特開2004-356774)に表された図面

意匠登録出願に追加された図面の一部
【正面図】 鎖線で表した形態が意匠出願時に追加された。

以上