第47回 「中国での知的産権裁判傍聴記」 

今月は東京都千代田区岩本町2-5-13に鎮座する繁栄お玉稲荷大明神を紹介します。この神社は先月ご紹介した「お玉が池」の近くにあり、祭神は倉稲魂命(ウカノミタマノミコト)であり、太田道灌、足利義政、伊達政宗の参詣等多くの崇敬を集めていたとのことです。安政2年の大震火災で焼失し、明治4年に分社のあった葛飾区新小岩於玉稲荷神社へ本社を遷座したそうです。現在は、当時の面影もなく、ひっそりとしています。

【社殿正面】 【神額】 【側に鎮座する祠】

 

この度、中国北京知識産権法院において、商標三年不使用取消審決不服訴訟の口頭弁論の傍聴機会を得ましたので、その紹介をします。

知識産権法院は中級人民法院(日本における地方裁判所)に相当し、北京、上海、広州に設けられています。上訴は高級人民法院(日本における高等裁判所)が扱います。中国は二審制であるため、高級人民法院の判決に対し不服を申し立てることはできません。

中国においては、登録商標を指定商品役務に継続して三年以上不使用であることを理由として、何人も取消審判を請求できます。換言すれば、所定の料金を支払えば取消審判を請求できることから、気軽に三年不使用取消審判を請求されているようです。
これに対し、商標権者は、取消を請求されている商品・役務の一つでも使用を立証できた場合、商標権が維持されます。

北京知識産権法院は写真のように、立派なビルでした。

中国において、外国人が裁判を傍聴するには、ビザ

が必要でした。
また、入館にあたっては、事前に届け出をしていても、代理人の弁護士、及び担当書記官が立ち会わなければ入ることが出来ませんでした。入館後、セキュリティチェックがあり、カメラ・PCの持ち込みは禁止されました。

右図に示すように、法廷は、裁判長、右陪席、左陪席、

書記官、及び法廷助理席があり、裁判官から右側が原告、左側が被告及び第三人(参加人)席でした。
各席にはパソコン、マイクが設置され、また、室内には数台の監視カメラが設置されていました。法廷入口は常時開放されており、入館できれば傍聴可能でした。
法廷入口横にはディスプレイが設置され、開廷中の事件名、原告、及び被告が表示されると共に、次の事件が表示されていました。
先の弁論が終わり、係官より入室を促されるまで、法廷外の廊下で待たされました。

弁護士は、法服を着用して入廷します。

日本では、審決取消訴訟といえども書面主義であり、口頭弁論といっても、単に「準備書面を陳述します。」で終了します。
しかし、中国では、裁判長が積極的に原告、被告、及び第三者(参加人)に対して矢継ぎ早に疑問点を質問して、真実を確定させ、心証を形成します。すなわち、米国の映画などで見かけるように、弁護士が法廷で互いの主張をぶつけ合うのです。
中国語での早口の会話は全く理解出来ませんでしたが、緊張感が直に伝わってきました。
行政事件の場合、通常 15 分程度で終了するそうですが、今回は、1時間程度要しました。

中国商標権を取得している事業者も多いと思いますが、中国では気軽に三年不使用取消審判をやってくるので、使用実績を確実に証明出来るように日頃から準備しておくことが重要であると、本傍聴によって感じました。
準備として以下の何れかを提案致します。皆様のお役に立つことができれば幸いです。
ア 直接自社にて中国国内で製造、又は販売する。
イ 代理店を経由する場合は、当該代理店との代理契約書を締結する。
ウ 少なくとも三年毎に中国で開催される展示会に自社名で出展する。
エ 中国オンラインショップに自社名で出品する。

以上

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