第4回 意匠再考(2)関連意匠制度について
今回は、関連意匠の活用について考えてみたいと思います。
「関連意匠制度」とは、デザイン開発の過程において、一つのデザインコンセプトから創作された複数のバリエーションのデザインについて、独自の効力を有する意匠権として保護する制度です。関連意匠制度によって、下記のイメージ図に示すように、本意匠に係る類似範囲を拡大し、結果として、保護範囲を拡張し、かつ、明確化できます。すなわち、本意匠(基本の意匠)と、これに類似する関連意匠(バリエーションの意匠)A,B,Cが、本意匠に類似している場合、A+B+Cの範囲まで権利範囲を明確に拡大することができます。換言すれば、従来、ともすれば、類似範囲に他人の意匠が登録された結果、類似範囲が狭くなっていた問題を解消することができます。
次ぎに関連意匠を活用している事例を紹介します。
【事例1】 関連意匠と部分意匠の組合せ 意匠に係る物品:包装用瓶
事例1においては、瓶周囲のくぼみ形状が本意匠では横向き楕円形であるが、関連意匠1においては縦向き楕円形まで拡大し、さらに、関連意匠2~4において包装用瓶の形状の範囲を拡大することを意図していると推測されます。
【事例2】 関連意匠と部分意匠の組合せ 意匠に係る物品:身体鍛錬器具
事例2においては、荒馬の背に載置した鞍の先端の持ち手部を関連意匠1及び2により、後端の臀部支えの形状を関連意匠3及び4により、拡大することを意図していると推測されます。
【事例3】関連意匠 意匠に係る物品:腕時計本体
事例3においては、長方形の表示部に複数の矩形ブロックを逆く字形に配置すると共に、余白部に時刻表示用の液晶部を配置した本意匠に対し、複数の矩形ブロックをランダムに配置した関連意匠を取得することにより、複数の矩形ブロックと時刻表示用の液晶部を配置した意匠であれば、全て類似範囲に含めることを意図していると推測されます。
【事例4】 関連意匠 意匠に係る物品:包装用缶
事例4においては、楕円形の枠内にミカン全体を左側に、及び、半割ミカンを右側に配置した本意匠に対し、関連意匠において本意匠と同一の枠内にミカンと同様にリンゴ全体及び半割リンゴを配置することにより、同一の枠内に同様に他の果物が配置された意匠まで類似意匠になるよう拡大することを意図していると推測されます。
したがって、意匠の最大の欠点であった保護範囲について、部分意匠制度と関連意匠制度を活用することによって大幅に改善することが出来ます。
また、関連意匠制度・部分意匠制度と同趣旨の制度は下表に示すように外国にも存在します。
以上より、前回の部分意匠制度と今回の関連意匠制度とを組み合わせることにより、従来の全体意匠に比して広範な類似範囲をカバーする意匠権を取得することができます。したがって、特許を取得できない枯れた技術分野において、又は、特許と共に意匠権を取得し、差別化に活用しては如何でしょうか?
以上