第31回 「職務発明制度改正」その1

今年の元旦は天気に恵まれ、昨年ご紹介した約20Kmの初詣ジョギングを完走しました。
暖冬とはいえ、明け方の寒さは厳しく、お賽銭もまともに掴めなくなり、本町田にある菅原神社境内の焚き火で悴んだ手を温める必要がありました。その後、高速道路をとばして新装なった故郷の蛟蝄神社(2300年前創建)にて新年の祈祷を行い、無事に一日が終わりました。

さて今年の知財界のトピックは、何といっても改正職務発明制度が施行されることでしょう。皆様の会社等では既に対応を検討済みでしょうか?今後検討される皆様のご参考となる情報を、今回を含め何回かに分けて提供したいと思います。
1 特許法第35条(職務発明)改正のポイント
(1)第3項(新設)
職務発明の特許を受ける権利を原始的に使用者等に帰属することを認める規定です。 実用新案法及び意匠法において準用しています。
(ただし、従来通り、従業者帰属とすることも可能(第2項)
(2)第4項
職務発明の特許を受ける権利の譲渡の見返りとして、旧法では「相当の対価」としていたものを、「相当の金銭その他の経済上の利益(相当の利益)」に変更された。
(3)第6項(新設)
経産大臣は、相当の利益を定めるためのガイドライン(指針)を定める。
2 第3項新設の意義
(1)内容
職務発明の特許を受ける権利を原始的に使用者等が取得することを可能にする。
(2)何を原始的に取得するのか?
発明と同時にその発明に対する特許を受ける権利を取得する。
⇒ 出願人になる権利を有する。
(3)使用者が原始取得するにはどうすれば良いか?
職務発明規定等に原始取得する旨を定める。

【規定例】
職務発明については、その発明が完成した時に、会社が発明者から特許を受ける権利を取得する。ただし、会社がその権利を取得する必要がないと認めたときは、この限りでない。
(4)その他の条文との関係はあるか?
相当の利益を職務発明規定等に定めること(第5項)は必要条件ではないです。しかし、組織としては定めておいた方が無難です。
(5)効果
①二重譲渡の問題を回避できます。
発明者たる従業者が、自分の職務発明を自社に報告せずに、第三者にその特許を受ける権利を譲渡した場合において、当該第三者が使用者より先に特許出願をしたときは、現行制度下では、 第三者が権利者となる(二重譲渡問題)。
⇒ 特許を受ける権利を初めから使用者等に帰属させることにより、この問題を解決できる。


出所:改正法説明会資料「平成27年特許法等の一部を改正する法律について」P5

②共同発明の承継手続きの簡素化
現行制度では、企業が、自社の従業者(共同発明者a)から特許を受ける権利を承継する場合、他社の従業者(共同発明者b)の同意も得る必要があるため、権利の承継に係る手続負担大である。
⇒ 特許を受ける権利を初めから使用者等に帰属させることにより、この問題を解決できる。


出所:改正法説明会資料「平成27年特許法等の一部を改正する法律について」P4

以上

次月は特許法第35項第4項について解説します。

創造性のある著作物保護に

電子公証サービス

押印する人