第15回 「異議申立制度の復活に乾杯」
やっと耐え難い猛暑も過ぎ、何をするにも快適な季節になり、ホットしています。アジア大会や米国大リーグ等における日本選手の活躍に胸を踊らせると共に、自然災害や人的災害によってやむなく落命された方々のご冥福を願う今日この頃です。
特許法等の改正法が国会を通過し、来年度(推測)から異議申立制度が復活することになりました。従前の異議申立制度は、特許庁における審査の見直を目的とし、特許権を巡る当事者間の紛争解決を目的とする無効審判と併存していました。
しかし、付与後異議申立も紛争解決を目的として使用されるケースが多いことから、付与後異議申立を無効審判制度に包摂一本化する改正が平成15年に行われました。現時点においては、特許庁における業務効率化の一環として改正のように思われます。
異議申立・無効審判・情報提供の変遷については図1をご参照下さい。
しかし、グラフ1に示すように、平成15(2003)年頃から昨年までの、異議申立・無効審判・付与前情報提供の推移を見ると、無効審判の件数は300件/年程度で横ばいであるが、情報提供が7000件/年程度に増加し、情報提供が付与後異議申立に取って代わったことが解ります。
この理由は単純であり、無効審判の場合には請求人を明示しなければならないためであると推測します。
さらに悪影響として、特許を否定し得る有効な資料を持っているにも拘わらず情報提供をせず、また、情報提供を行っても提供者の趣旨を審査官が正しく理解し得ず、不安定な権利が増加したことも窺い知れ、さらに無効審判費用の高額化も影響していると思われます。
さらにまた、グラフ2に示すように、審査の迅速化によって、出願公開前に特許される数が増加していることも背景にあると思われます。
その意味において、今回の異議申立制度の復活は極めて好ましく、皆様と共に祝杯を上げたいといと思います。
表1に付与前異議申立・無効審判・情報提供に関する特徴をまとめました。この表1から明らかなように、異議申立は、申立期間に制約があるものの、ダミーによる申立が可能であること、訂正審判がなされた場合の反論の機会があること等、使い勝手がよいものになっています。また、自社にとって障害となる特許は、出願公開の段階で把握できることが多いと思われますので、特許になるまでの間に先行技術の調査期間を確保でき、障害特許の無効化を図る上において極めて使いやすい制度であると考えます。
皆様においても、異議申立制度を活用し、他社特許対策を効果的に行なわれては如何でしょうか。
以上