第12回 商標に何を託しますか?(第2回) 

前回は、新しい商標の例をご紹介致しました。
これらの新しい商標の恩恵を受けられる企業はどの程度あるのでしょうか?小職は極めて少ないであろうと考えています。
しかし、今回の商標法改正を契機に御社の商標戦略、言い換えれば、ブランド戦略を見直して頂きたいと思い、本稿を執筆することに致しました。

商標法の目的は、商標を保護することにより商標に化体した信用を保護し、もって需要者を保護すると共に産業の発達に寄与することと定められています(商標法第1条)。
そうです、商標は御社の信用が化体した財産なのです。

商標を権利化し、商品やサービスに用いれば商標権を活用したことになるのでしょうか?表面的には商標を活用していますが、真の活用にはなっていません。
すなわち、御社の意思が商標を通じてお客様に伝わらなければ真の意味で商標を活用したことにはなりません。御社(社長)の思いが、お客様に伝わることにより、お客様に信用され、商標に御社の信用が化体するのです。

例えば、西友のプライベートブランドとして1980年にスタートした「無印良品」を視た需要者は、何を連想するでしょうか?

シンプル(無駄がない)、品質は良い、それほど高くはない、とのイメージを連想するのは私だけでしょうか。そうです、㈱良品計画は、全ての商品・サービスを通じてこのメッセージを出し続けることで需要者にしっかりとこのイメージを印象付け、数ある選択枝の中から選択してもらえるように仕向けているのです。 具体的には、“わけあって安い”というコンセプトを打ち出し、素材の見直し、工程の点検、包装の簡略化という3つ方向を自己の商品に徹底させた「無印良品」というブランドを顧客に伝えた結果なのです。

第2の例を挙げれば、江崎グリコ(株)のチョコレート菓子「ポッキー」です。
「ポッキー」といえば、細長い棒状の焼き菓子(商品名「プリッツ」)の周囲を一部分を残してチョコレートで覆った菓子であることを思い浮かべるでしょう。ポッキーは、棒状の焼き菓子の周面に凹部を設けることでチョコレートの垂れを防止しました。周面に凹部を設ける技術は実用新案権化して、登録実用新案の有効期間中は独占状態とし、「ポッキー」の名前を浸透させることでスティック状のチョコレート菓子と言えば「ポッキー」のブランドを浸透させ、実用新案権が消滅した後も、高いシェアを維持しています。

商標登録第3103630号 指定商品:菓子及びパン 権利者:江崎グリコ株式会社

同じように、御社の思いが商標を通じて需要者に伝わっていますか?
商標に込める思いが無い場合は、作って下さい。従業員と一緒になって作っても良いです。しかし、最終決定は、社長がして下さい。自己の逃げ道を無くすためです。
そして、社長1人ではなく、全従業員で心を込め実行して下さい。社長一人ではお客様に伝わらないのです。従業員それぞれが、社長と同じ方向性を持ち、しつこく実行しなければお客様には伝わらないのです。
その意味で、社長(経営者)は商標に込める思いを従業員に伝え、それを全従業員が実行するようにし向けなければなりません。ぜひ実行してみて下さい。

(ご参考)以下は今回の導入が見送られた新しい商標です。これらの商標も将来的には商標登録されるようになると思います。グローバル化は避けて通れないためです。
(1)「におい」の商標:嗅覚で認識される商標である。
(2)「触感」の商標:触覚で認識される商標である。
(3)「味」の商標:味覚で認識される商標である。

以上

商標・意匠登録の事前保護に

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