第119回コラム 「企業価値担保権が2026年5月25日からスタート」

今回は、メトロ東京日比谷線・東西線「茅場町駅」から徒歩約6分に鎮座する明星稲荷神社(ミョウジョウイナリジンジャ)(中央区日本橋小網町4-9)をご紹介します。

同社は、戦国時代、太田道潅が築城した江戸城内の大内山に鎮座していたが、徳川家康によって地頭職にあった小網町浜口家の地守り神とされたとのこと(明星稲荷神社由来より)。

【昭和15年建立鳥居】
【正面】
【神額】
【社殿】

(筆者撮影)

今回は、2024年に成立した「事業性融資の推進等に関する法律」に基づき創設され、2026年5月25日に施行予定の企業価値担保権について紹介します。

企業価値担保権とは、企業が持つ「総財産(有形・無形を含む事業全体)」を担保として設定できる新しい担保制度です。

従来の日本の融資は不動産担保や経営者保証に依存していましたが、企業価値担保権は技術・ノウハウ・顧客基盤など無形資産を多く持つ企業でも融資を受けやすくすることを目的としています。

制度が生まれた背景

従来の担保制度には以下の課題がありました。

  a 不動産など「モノ」中心の担保評価

  b 無形資産の価値評価が難しく、スタートアップなどが融資を受けにくい

  c 担保権者が事業そのものに関心を持ちにくく、経営改善支援が遅れる

これらを解決するため、企業の事業性(将来性)を評価して融資する仕組みとして企業価値担保権制度が設計されました。

担保の対象(目的財産)

担保対象は、法律上「債務者の総財産」と定義され、以下が含まれます。

  a 不動産・動産などの有形資産

  b 営業秘密・技術ノウハウ(特許権、意匠権、商標権、営業秘密等)

  c 顧客基盤

  d 契約上の地位

  e 将来キャッシュフロー

  f のれん

すなわち、企業の事業価値そのものを包括的に担保にできる点が最大の特徴です。

企業価値担保権の仕組みと特徴

1.事業全体を担保にできる

  企業の強み(技術・ブランド・顧客基盤など)を含む事業価値を担保にできるため、不動産を持たない企業でも融資が受けやすくなる。

2.金融機関が事業に関与しやすくなる

  担保価値が事業全体に及ぶため、金融機関が経営改善支援に積極的になる効果が期待される。

3.労働者保護が強化されている

  担保権実行時も

   a 原則「事業譲渡」による換価

   b 雇用維持を重視

   c 賃金は優先的に弁済とされ、労働者保護が手厚い制度設計。

活用が期待される場面

a スタートアップの資金調達(無形資産中心の企業)

b 老舗企業の事業承継(ブランド力や顧客基盤を評価)

c 不動産担保が弱い企業の設備投資

まとめ

企業価値担保権は、企業の事業価値全体を担保にできる画期的な制度であり、不動産担保に依存しない“事業性評価に基づく融資”を促進する仕組みです。

  a 無形資産を持つ企業の資金調達を後押し

  b 金融機関の経営支援を促進

  c 労働者保護も強化

という点で、今後の日本の融資慣行を大きく変える可能性があります。

金融機関が重視するポイント

下記項目に基づいて、知財の“事業への貢献”を客観的に説明できる企業ほど有利です。

  a 知財が競争優位を生む理由

     b 知財を活用した収益モデル

     c 技術の代替可能性(他社が真似できるか、参入障壁)

     d 知財の保護状況(特許網、ブランド戦略、競争優位の持続性)

     e 知財の活用による将来キャッシュフローの見通し

知財でのアピール例

  ■ 特許・意匠

     a この特許は競合が同じ方式を採用できない構造的障壁になっている

     b この特許があるため、製造コストが30%低減し、利益率が安定する

     c 特許が生む将来キャッシュフローを示す

            特許製品の売上予測

            ライセンス収入の見込み

            特許網による価格維持力

  ■ 特許の権利関係を整理しておく

     a 共同出願の整理

        b ライセンス契約の明確化

        c 実施権の範囲

  ■ ブランド力を“数値”で示す

     数値化の例

       a リピート率

       b 顧客獲得単価

       c ブランド検索数

       d 店舗売上の安定性

  ■ ブランドの再現性を説明する 事業譲渡が容易=担保価値が高い

     a 店舗運営ノウハウ

     b マニュアル化されたサービス

     c EC運営体制

  ■ 商標の権利範囲を明確化 ブランドの保護範囲が広いほど評価が上がる

     a 指定商品・役務の整理

     b 海外商標の取得状況

     c 類似商標との関係

  著作権を持つ企業のアピール方法

  ■ IP(キャラクター・作品)の収益モデルを明確化

     著作権は単体では評価しにくいので、“IPが生む収益構造”をセットで説明することが重要。

  ■ 例

     a ゲーム:課金モデル、DLC、広告

     b 映像:配信収入、海外販売

     c サブスク収益、解約率

  ■ ファンコミュニティやユーザーデータを示す 著作権が継続的な収益を生む証拠

     a MAU(Monthly Active Users) /DAU(Daily Active Users)

     b 継続率

     c コミュニティ規模

  ■ 著作権の帰属を明確化 権利関係が明確なほど担保価値が安定

     a 外注制作物の著作権譲渡契約

     b 共同制作の権利関係

     c 二次利用権の整理

金融機関に刺さる“知財アピール資料”の構成案

金融機関向けには、次のような構成が最も説得力がありそうです。

  a 知財の概要(特許・商標・著作権)

  b 知財が生む競争優位(参入障壁・代替困難性)

  c 知財を活用した事業モデル(収益構造)

  d 将来キャッシュフローの予測

  e 知財を含む事業パッケージの譲渡可能性

  f 権利関係の整理状況(リスクの有無)

  g 知財戦略(今後の取得・維持方針)

[参考]

金融庁:https://www.fsa.go.jp/policy/kigyoukachi-tanpo/index.html

特許庁:https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/r6-chusho-chizaireport.html

以上