第58回 「米国特許出願における譲渡証について」

今回は、JR総武線浅草橋の近くに鎮座する篠塚稲荷(台東区柳橋1-5-1)をご紹介します。本神社は、新田義貞の家臣篠塚伊賀守重廣が当地にあった稲荷社に祈願を続けていたことから、「篠塚稲荷」と称されるようになったとのこと。

【正面】
【石碑】
【社殿】
【神額】

(筆者撮影)

  皆さんの会社では、米国に特許出願する場合、発明者から譲渡証にサインをして貰っていると思います。しかし、発明者が退社した後、転居した場合等連絡が付かず、探し出すのに苦労した経験が少なからずあるかと思われます。最悪は、全く連絡がとれないこともあります。そのような場合であっても、雇用契約書、発明開示書(届出書)等の文書に在職中になした発明の譲渡を明示した書類に署名を受けることにより、正当な特許出願人なり得ます。上記書類を見直してみては如何でしょうか。

☆原則
 譲受人(assignee)に特許を発行するには、譲受人が特許出願人(patent applicant)として認識されるように、米国特許商標庁(USPTO)に譲渡を正式に通知しなければなりません(MPEP((Manual of Patent Examining Procedure))第301条は、USPTOにおける正式な譲渡記録を含め、特許及び出願の所有権/譲渡性について説明しています。)。
 譲渡は、各発明者から譲受人(例えば、法人、パートナーシップ、大学、政府機関など)に特許権の全体を譲渡しなければなりません。
 特許出願ごとに発明者1人につき1件の特許譲渡が必要とされるため、優先権を主張する後続の出願は、しばしば以前の譲渡に依拠することがあります(譲渡の特定の文言に依存しますが)。部分継続出願(continuation-in-part application)のように、出願中の出願に新たな主題が導入された場合、別の譲渡が要求されることがあります。

☆例外(譲渡なしで特許出願を行うことができる場合)
 幸いなことに、出願前、または発行手数料の支払い前の出願審査中に発明者が譲渡書類に署名することができなくても、出願人は特許を取得することができます。具体的には、雇用契約書、発明開示書、または他の文書などの所有権の他の文書証拠を、署名された譲渡文書の代わりにUSPTOに記録することもできます(37 CFR 1.46.)。
 雇用契約書には、発明者が雇用主に雇用されている間に開発された発明のすべての権利、権限、および利益を譲渡するという(the inventor assigns all rights, title, and interests in any invention developed while employed by the employer)文言が含まれている場合があります。場合によっては、雇用契約書には、従業員が雇用者に発明を譲渡する義務があることを明確に記載していることもあるでしょう。
 発明開示フォームには、フォーム上の発明者の署名が、発明者が、発明開示に係るあらゆる権利、権限、および利益を雇用者に譲渡したこと、および/または譲渡する義務があることを認める旨の文言(the inventor’s signature on the form acknowledges the inventor’s assignment of and/or obligation to assign any rights, title, and interest in the invention disclosure to the employer)が含まれている場合もあります。発明開示書類に発明者の署名が含まれている場合、これは、雇用者が譲渡義務のある被譲受人であることを示す十分な証拠となり得ます(37 C.F.R. 1.46(b)(1))。記録の前に所有権の証拠書類を調査して、記録の前に修正を必要とする可能性のある情報(例えば、業界のトレンド言語、先行技術の議論、従業員の個人情報など)を特定し、黒塗りすることが重要です。そうでないと証拠書類の公開記録が出願人にとって望ましくない選択肢となる可能性があります。
 また、当該事項について十分な所有権を示す者は、特許出願を行い、そのような行為が適切であることを示した上で、出願人として特定されることができ、その結果として得られる特許は出願人の名前で発行することができます(37 CFR 1.46.)。 国内段階の出願(national stage application)をする場合、国際出願の国際段階で出願人を特定するか、国際登録の公表で出願人として特定されていなければなりません。

☆十分な所有権または譲渡義務の表示
 37 CFR 1.46(b)(2)に規定されているように、「出願人が他の方法で当該事項について十分な所有権を示す者である場合,その出願人は以下を 含む請願書を提出しなければならない。(i)第 1.17 条(g)に規定されている手数料、(ii)そのような人物が本件について十分な所有権を有していることの証明、及び (iii)発明者に代わって、また発明者の代理人として、本件について十分な所有権を示している人物が特許出願を行うことが当事者の権利を保護するために適切である旨の記述を含む申立書を提出しなければなりません。」さらに、MPEP §409.05に記載されているように、「他の方法で当該事項について十分な所有権を 示す者が特許出願を行う能力は、発明者の全員が出願の実行を拒否した場合、又は勤勉な努力をしても発見されないか 連絡が取れない場合に限定されるものではない」とされています。
 十分な所有権の表示には、”関連する事実の証明と、そのような行為が当事者の権利を維持するために適切であることを示すこと”が必要です(37 CFR 1.46(a);37 CFR 1.424)。十分な所有権の表示は MPEP セクション 409.05 で示されており、状況に応じて様々な方法で立証される可能性があります。MPEP§409.05 は以下のように述べています
 譲渡または譲渡の合意以外の方法で得られた所有権は、管轄権を有する裁判所(連邦、州、または外国)が、その管轄権における権限の重みで 37 CFR 1.46 出願人に発明の所有権を授与するという旨の適切な法的覚書によって証明することができます。裁判所が 37 CFR 1.46 出願人に権限を与えるという結論を裏付ける事実は、その事実を直接知っている者の宣誓供述書または宣言書によって記録されなければなりません。法律上の覚書は、関係する法域の法律に精通した弁護士が作成し、署名しなければなりません。所有権を証明するために依拠した法令(米国法令以外の場合)又は裁判所の判決(連邦裁判所の報告された判決又は米国特許四半期報に報告された判決以外の場合)のコピー(英語)を記録しておく必要があります。
 この問題について十分な所有権を示す者としての出願人は、37 CFR 1.46に規定されている発行手数料を支払う前に、必要な申立書、手数料、情報を提出しなければならないことを覚えておいてください。

☆最終的な考慮事項
 特許出願人は、発明者が署名した譲渡書を締結しなくても、特許審査をコントロールして特許権を主張することができます。しかし、その前に、出願人は、特定の状況について弁理士と調整し、現在のUSPTO規則を参照する必要があります

 本対応をする場合には、米国弁護士にアドバイス受けて対応することをお薦めします。
 本情報は、米国特許弁護士野口剛史氏の許諾を得て掲載しています。

以上