第104回コラム 「すしざんまい事件の解説」

今回は、JR 総武快速線新日本橋駅より徒歩約4分にある福田稲荷神社(ふくだいなりじんじゃ)(中央区日本橋本町4-5)をご紹介します。

福田稲荷神社は、和銅四年(西暦710年)に伏見稲荷より分社して福田村(武蔵国南豊島郡福田村:神田山(神田明神)を切り崩した土地)に鎮座したのがそもそもの縁起とのこと。

同稲荷神社は、例に漏れず、ビルの谷間にひっそりと佇んでいます。(出所:福田稲荷神社の由来)

【正面】
【神額】
【由来書】

11月初旬に「すしざんまい」に関する知財高裁判決のニュースが流れました。

本判決は、すしチェーン「すしざんまい」を展開する株式会社喜代村(以下「喜代村」という。)が、ダイショージャパン株式会社(以下「ダイショージャパン」という。)に対し、日本向けWebサイトにおける「Sushi  Zanmai」の使用の中止と損害賠償を求めた事件です。

なお、ダイショージャパンは、調味料メーカーの株式会社ダイショーとは無関係とのことです。

ダイショージャパンのグループ会社であるSuper Sushi Sdn. Bhd.(以下「スーパースシ」という。)は、マレーシアにおいて、【写真1】のように回転寿司店を多数展開しています。

【写真1】

また、マレーシアにおいて、下記【商標1】及び【商標2】の商標権を取得していますが、日本において商標権は取得していません。

【商標1】
登録番号2014054357 第30類、第43類

【商標2】
登録番号07008010 第43類

ダイショーグループのスーパースシは、「本当に美味しい日本食」を提供するため、厳選した食材を日本から直送しているそうです。
(出所:https://neko-goro-yamaga.hatenablog.com/entry/2024/10/31/075846)

本判決は、令和3年(ワ)第11358号(令和6年3月19日判決)の控訴審判決です。
取りあえず、前記地裁判決の概要を紹介し、知財高裁判決は後日報告させて頂きます。

起訴理由

喜代村は、以下の理由によってダイショーグループを提訴しました。

下図1のウェブページにおいて、アカウント「Sushi Zanmai」を使用する行為は以下の違法行為を構成するので、当該アカウントの使用中止及び削除、並びに1100万円の損害賠償を求めました。

(1)不正競争防止法第2条1項1号又は2号の不正競争

 (周知商標混同惹起行為、著名表示冒用行為)

【表示1】



(出所:令和3年(ワ)第11358号判決書)

【表示2】




(出所:令和3年(ワ)第11358号判決書)

(2)商標1ないし3の侵害(商標法第36条1項違反)

 【商標1】
商標登録第5003675号

第30類  すし

第43類  すしを主とする飲食物の提供

 【商標2】
商標登録第5511447号 ※2022/08/03消滅

登録商標(標準文字)  すしざんまい

第30類  すし、すしを主とするべんとう

第43類  すしを主とする飲食物の提供

 【商標3】
商標登録第5758937号

登録商標(標準文字)  SUSHI  ZANMAI

第30類  すし、べんとう、丼物

第43類  すし・丼物を主とする飲食物の提供

(3)裁判所の判断

   ア 争点1(商標権侵害の成否)

    (1)商標1

「商標1における「つきじ喜代村」、「すしざんまい」及び「SUSHIZANMAI」の各構成部分は、それぞれ、書体や文字の大きさが異なる上、上段、中断及び下段の三段に分かれていることから、外観上、それぞれ独立したものとして明確に区別することができ、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないというべきである。」として、「すしざんまい」を要部として抽出し、それと被告各表示との類否を判断することができるというべきである。」と判示しました。

    (2)商標2

商標2は標準文字の「すしざんまい」

    (3)商標3

商標3は標準文字の「SUSHI ZANMAI」

   イ 商標1とダイショージャパンの表示1及び表示2との対比

    (1)表示1(アカウント)「Sushi  Zanmai」

商標1と表示1は、いずれも「スシザンマイ」という称呼及び「すしに熱中する」という観念を生じさせるものであり、その称呼及び観念は同一といえるので、商標1と表示1は類似する。

    (2)表示2

表示2は「寿司三昧」という縦書きの文字と、筆書体様の「Sushi  Zanmai」という横書きの文字を「T」を横向きにしたような形で組み合わせた部分、赤色の下地部分を「スシ」という文字で白抜きしたスタンプ様の部分及びその背景の円状の模様が一体となっている。

    (3)表示3

商標3の標準文字で記載されたアルファベットの「SUSHI ZANMAI」と「Sushi  Zanmai」は両者の称呼及び観念が同一であり類似する。

    (4) 商標2とダイショージャパンの表示1及び表示2との対比

商標2は表示1及び表示2と称呼及び観念が同一であり、商標2と表示1及び表示2は類似する。

    (5) 商標3とダイショージャパンの表示1及び表示2との対比

商標3は表示1及び表示2と称呼及び観念が同一であり、商標3と表示1及び表示2は類似する。

   ウ 争点1-2(原告各商標の指定役務と被告各表示に係る役務の類否)

各ウェブページにおけるダイショージャパンが管理する各表示は、すしを主とする飲食物の提供を行う本件すし店を紹介するために掲載されたものであり、「すしを主とする飲食物の提供」と類似の役務に係るものといえるから、喜代村の各商標の指定役務と被告各表示に係る役務とは類似するものといえる。

本件各ウェブページにダイショージャパンの各表示を掲載した行為は、「役務に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法2条3項8号)に該当する。よって、ダイショージャパンは原告各商標を「使用」したものと認められる。

   エ 損害額

ダイショージャパンの本件すし店に対する売上げである1億4475万8151円に使用料率3.8パーセントを乗じた550万0809円と認められる。

以上