第3回 意匠再考(1)部分意匠制度について
第3回と第4回は、意匠について考えてみたいと思います。
意匠に関し、皆様はどの様な感想をお持ちでしょうか?
登録意匠の形状のみなので権利範囲が非常に狭いと思われているのではないでしょうか?
確かに、物品の全体の形態を保護する全体意匠については、類似の範囲が狭かったことも否めません。しかし、部分意匠制度、関連意匠制度を活用することで従来のイメージが覆されつつあります。そこで、今回は部分意匠制度の有効活用について考えてみましょう。
ご存知の通り、「部分意匠制度」とは、物品の部分の特徴ある形態を保護する制度です。
登録意匠の効力の及ぶ範囲は、当該登録意匠及びこれに類似する意匠にまで及びます(意匠法第23条)。
部分意匠の類否判断は、(ア)意匠に係る物品、(イ)部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の機能・用途、(ウ)その物品の全体の中に占める部分意匠として登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲、(エ)部分意匠として登録を受けようとする部分自体の形態により判断されます。
事例1に示すように、部分意匠の対象の操作ボタンの形状が同一であって、物品が類似(メモリーカード用データ表示器とオーディオ用メモリーカードプレーヤー)であれば、操作ボタンの位置が本体の右上端部又は下端部に位置していようが、傾き角度が異なっていていようが、類似意匠であるとされています。
【事例1】特許庁意匠課意匠審査基準室 平成24年度「意匠の審査基準と意匠制度の有効活用」 より
これにより、従来の全体意匠の概念を超えた保護が得られることは明らかです。
また、このことは、部分的に特徴ある意匠を保護するという部分意匠の趣旨からして当然のことであると言えます。
裁判所においても、事例2に示すように、登録意匠に係るブラシ部分の意匠の形態が同一であれば、持ち手の形態が異なっていても、類似意匠であると判断されています。
【事例1】特許庁意匠課意匠審査基準室 平成24年度「意匠の審査基準と意匠制度の有効活用」 より
そして、グラフ1に示すように、部分意匠の出願比率(赤折れ線)が増加傾向にあります。
意匠の最大の利点は外観によって類否判断できることであり、最大の欠点であった保護範囲は部分意匠制度によって改善されています。
これらの状況から、意匠の活用を再考しては如何でしょうか。
特許行政年次報告書2012年版第1部第1章国内外の出願・登録状況と審査・審判の現状 26ページ
以上