第27回「著作権により保護される著作物とは?」

第25回コラムにおいて紹介した「弁理士知財キャラバン」に関し、実際に企業に対しコンサルティングを行う支援員になるため約500人の弁理士が現在研修中です。小職は、日本弁理士会東北支部における模擬研修の講師を努めました。そのついでといってはなんですが、松島まで足を伸ばしてみました。新幹線から仙石線に乗り換えて約40分、松島海岸駅に到着しました。津波の痕跡が残っているかなと回りを見回しましたが、全く見当たりません。後で地元の人に聴くと、松島湾内に点在する小島によって大きな津波が遮られると共に、水深が2メートル程度と浅いため、津波の高さは2メートル程であり、被害は軽微であったとのことです。しかし、島々の松の木が枯れているのを見るとその影響が少なからず見て取れます。また、青葉城の石垣も一部崩れたとのことでしたが、完全に復旧されていました。震災から4年が経過し、復旧もようやく軌道にのりつつあるようです。

さて、今回も著作権問題、特に類似・非類似の判断基準について考えたいと思います。
まず、類似性を肯定した判例と、否定した判例を2例ずつ紹介します。

◎「LEC出る順シリーズ事件」 類似性肯定
東京地判平成16年6月25日平成15年(ワ)第4779号損害賠償請求事件
判決文において、「原告イラスト1と被告イラスト1は,人形が木彫製であるか否か,上半身の傾き方や脚の開き方,右腕の格好,左手上の家の数等の点で相違が見られるものの,A型の体型にデフォルメされた人形が左手で肩の高さに家を持ち上げている全体的な構図のみならず,人形の手のひらの上の家が複数であり,手のひらのすぐ上に配置された家の屋根の稜線部分に支えられるように別の家が載っているという構図や,人形を肌色一色にした上,手のひらの上の家を三角屋根にし,窓を青色の格子状にし,鮮やかなパステルカラーで着色するなどの具体的な表現方法を含む多くの点で共通しており,このような一致は偶然によるものとは考え難い。」と認定し、類似性が肯定されました。

◎「みずみずしいスイカ事件」 類似性肯定
東京地判平成11年12月15日平成11(ワ)8996 著作権侵害差止等請求事件&東京高判平成13年6月21日平成12年(ネ)第750号著作権侵害差止等請求控訴事件
地裁判決では、スイカの形状・傾きの相違、氷や籐の籠の追加を理由として類似性が否定されましたが、控訴審において、「本件写真は、そこに表現されたものから明らかなとおり、屋内に撮影場所を選び、西瓜、篭、氷、青いグラデーション用紙等を組み合わせることにより、人為的に作り出された被写体であるから、被写体の決定自体に独自性を認める余地が十分認められるものである。したがって、撮影時刻、露光、陰影の付け方、レンズの選択、シャッター速度の設定、現像の手法等において工夫を凝らしたことによる創造的な表現部分についてのみならず、被写体の決定における創造的な表現部分についても、本件写真にそのような部分が存在するか、存在するとして、そのような部分において本件写真と被控訴人写真が共通しているか否かをも検討しなければならないことになるものというべきである。」と認定し、被告作品もこれら特徴的な表現が直接感得できるとして類似性が肯定されました。

◎「けろけろけろっぴ事件」 類似性否定
東京地判平成12年8月29日平成12年(ワ)第4632号損害賠償等請求事件&東京高判平成13年1月23日平成12年(ネ)第4735号損害賠償等請求控訴事件
控訴審判決文において、「擬人化されたカエルの顔の輪郭を横長の楕円形という形状にすること、その胴体を短くし、これに短い手足をつけることは、擬人化する際のものとして通常予想される範囲内のありふれた表現というべきであり、目玉が丸く顔の輪郭から飛び出していることについては、我が国においてカエルの最も特徴的な部分とされていることの一つに関するものであって、これまた普通に行われる範囲内の表現であるというべきである。そうすると、本件著作物における上記の基本的な表現自体には、著作者の思想又は感情が創作的に表れているとはいえないことになる。」と認定した上で、顔の輪郭、目、鼻、口等の表現が異なるとして類似性が否定されました。

◎「タウンページ・キャラクター事件」 類似性否定
東京地判平成11年12月21日平成11(ワ)20965著作権侵害確認請求事件
判決文において、「原告漫画のキャラクターと被告漫画のキャラクターは、本を擬人化したという点では共通しているが、それ自体はアイディアであって、著作権法で保護されるものではない。」と認定し、目、鼻、腕等において表現が異なり、表現の特徴が直接感得できないとして類似性が否定されました。

☆類似性の判断基準
上記4つの判例を勘案すると、通常の表現部分、換言すれば、創作性が無い表現部分は保護されず、創作性が発揮された特徴部分はある程度の範囲をもって保護されると言えます。

☆話題となった太田市美術館・図書館のマークと、似ているとしてあげられた海外デザイナーの作品(JOSH DIVAINなるブランドのようです。)は類似しているのでしょうか?
確かに、両者は●(黒丸)と直線を組み合わせて構成されている点において共通しています。しかし、これはアイディアであって、表現ではありません。
太田市のマークは垂立直線に左端が接触して二個の黒丸が垂直に隣接配置され、その右側に垂立直線、その右側にT字型線、さらに、その右側に、黒丸が一つ配置されています。
一方、似ているとされた海外デザーナーのマークは、一つの黒丸の右側に垂立直線、その右側に一つの黒丸、さらに、その右側に垂立直線が配置され、その垂立直線の上端部から右方へ水平に短い直線棒が突出されています。
以上のように、太田市のマークと似ているとされた海外マークの表現は全く異なっていることから、これらは明らかに非類似であると考えます。

☆まとめ
このように、著作権をめぐる争いは、アイディアを著作権であると誤認したケースが多いのが事実です。
したがって、著作権侵害だと言われた場合であっても、それが著作物であるのかアイディアであるのか、思想又は感情の表現であるのか、文学・美術・音楽等の範疇に入るのか等々、慎重に検討することによって、侵害しないことも多いのが実体です。したがって、もしもの際は、粘り強く検討することが重要です。

以上