第25回 「Karakuriからイノベーションへ」

今年のお盆休みはあまり天気には恵まれませんでしたが、皆様どのように過ごされたのでしょうか。まだ、お休みモードの抜けきれない方もいらっしゃるかもしれませんが、本コラムをご一読ください。

さて今回は第19回コラムにて紹介した新坂を上って、更に100メートル程神田駿河台方面に進んだ場所に鎮座されている太田姫稲荷神社を紹介します。この神社は、太田道灌が、江戸城を築城する際、その鬼門除けとして祀ったことに由来し、明治5年に現在の名称に改称される前は、一口(いもあらい)稲荷神社と呼ばれていました。その謂われは、室町時代の末頃、太田道灌が天然痘にかかった娘の治癒を、当時、穢(けがれ)も洗い清めてくれる神社として有名であった山城国の一口(いもあらい) 稲荷神社に祈願したところ、全快しましたので、鬼門除けとして、一口稲荷神社を山城の国から移し奉ったとのことです。

さて2015 年は日本で産業財産権制度が確立されてから 130 年となる節目の年です。そこで、特許行政年次報告書2015年を取り上げることとし、特に中小企業にスポットライトを当てて検討したいと思います。
まず、最初に我が国産業の現状が次のように数値的に分析されています。
我が国の中小企業数は、約 385 万社と全企業数の 99.7%を占めるものの、近年の内国人の特許出願件数に占める中小企業の割合はほぼ横ばいで13%にすぎません(1-3-1図)。

中小企業の特許出願及び商標出願権するは微増傾向である(1-3-2図、1-3-5図)。

また、実用新案登録出願及び意匠出願は漸減傾向である(1-3-3図、1-3-4図)。

さらに、模倣被害は、大企業・中小企業とも共通した問題であり、模倣被害を受けた国は中国、台湾及び韓国が圧倒的である(1-3-13図)。

さらにまた、先行技術調査を実施しなくとも幸運にて抵触無しが40.8%を占めている(図1-3-14)。

特許庁は、これらのグラフ(数字)から何を訴えたいのでしょうか。 経済産業省は、イノベーション(*1)の創出を通じた我が国の産業技術力の強化に取り組んでいます(2006年7月に策定された「経済成長戦略大綱」)。  イノベーションの実現には企業数において97.5%を占める中小企業への期待が大きいと思われます。しかしながら、イノベーションの結果を反映する特許等の出願件数は、微増若しくは漸減傾向であり、イノベーションが遅々として進んでいない、換言すれば、他国に劣っていることに危機感を募らせているのはないかと思われます(次のOECD2005報告書)。

*1「イノベーションとは、ビジネス慣行、企業組織、渉外活動における、新たな製品/サービス、プロセス、マーケティング手法、或いは組織手法の実行又はそれらの著しい改善を指す。」(以下の最終報告書)。「以下の最終報告書は何を指していますか?

報告書において、イノベーション促進の解決策の1つとして、特許権を初めとする産業財産権情報の提供を上げている(図2-6-1図)。

これは、産業財産権情報(特に特許情報)を活用して研究開発の重複防止、無権利技術の活用、無用な紛争回避、及び、権利の有効活用を図れということであろうと推測できます。。
さらに、料金面等における支援、相談業務による支援(知財総合支援窓口)、専門人材による支援、知的財産制度の普及啓発活動、企業の海外展開における費用面の支援、及び、地域における支援体制が主要な支援活動となります。

しかし、本当にこれで良いのでしょうか? 筆者は、付け焼き刃のような感じがしてなりません。
イノベーションといえば、我が国では「からくり」が代表的であり、世界に誇れる文化であり、Karakuriとう英語にもなっています。すなわち、我が国にはイノベーションの土壌が育まれている。そうすると、イノベーションのために真に必要なのは、新たな価値創造(イノベーション)にチャレンジするKarakuriマインドを持ち、かつ、知財マインドを持った人材の育成ではないかと考えます。
そのため、第一に、新たな価値創造の楽しさや重要性を認識できる教育プログラムの実行が必要です。これにより我が国の国民が総クリエーター化し、人口比約3倍の米国や13倍の中国にも伍してゆけるクリエーティブな国家を実現し、さらに、義務教育後半より知財教育を充実させることにより知財マインドを有する人材を育成することにより、真の知財立国を実現すべきであると考えております。

以上

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