第10回 最近の進歩性判断の傾向
特許に携わる者の大きな関心事の1つに、進歩性の判断基準があります。特許庁では進歩性判断の「統一性」を担保するため、審査基準に基づいて運用しています。しかし、実際には進歩性判断における「うねり」は有るようです。現在は、従前よりも甘くなったと言われています。本当でしょうか?
下のグラフ1は、1997年~2004年までの大凡の、特許率・拒絶査定不服審判請求成功率・及び、無効審判成功率に関連する傾向を表したものです。これらは進歩性以外の拒絶及び無効理由も含まれていますが、進歩性に関する理由が多いことは経験則から明らかであり、進歩性判断の傾向を示していると言えます。
このグラフから明らかなように、特許査定率及び拒絶査定不服審判請求の成功率は減少傾向であり、無効率は上昇傾向であり、進歩性の判断は、2004年頃までは厳しかったことが伺えます。
しかし、近年(2008年頃より)は進歩性の判断が緩くなってきていると思います
グラフ2及び3をご覧下さい。無効審決取消訴訟における無効審決取消率(グラフ2)及び無効審判不成立率(グラフ3)とも上昇傾向であり、進歩性の判断が緩くなってきていることが推測できます。
換言すれば、特許が成立しやすく、かつ、つぶれ難くなっていると言えます。
特許を取得するにも、差止請求・損害賠償請求等の権利行使をするにも、今がチャンスのようです。
以上