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コラム概要

第38回コラム 「山口大学の知財活動」

2016年9月26日

 今夏、石川県能登半島にある七尾市を何らの事前調査もせずに訪問しました。早朝、開放感のある七尾駅前を散歩していると、一本杉通りなる道路標識が目に付いたので進んでいったところ、昭和初期を思わせる古い町並みが残っており、急に時間の流れが遅くなることが感じられ、嬉しくなりました。懐かしの昭和初期をご堪能下さい。



★まえがき
 先日、大学知財教育において、最先端を走っている山口大学の元締めをされている同大知的財産センター長の佐田洋一郎氏の講演を拝聴する機会があったので、その概要を紹介します。

★なぜ大学が知財教育に取り組むのか
 国際経営開発研究所の発表によれば、1980年代我が国の国際競争力は世界一であったが、1990年代初頭から下降を初め、2002年には30位まで下降した後、20位台で低迷しており、その要因として以下の3点が揚げられています。
   ①長期的なイノベーションの施策がない。
   ②大学教育が競争力向上に寄与していない。
   ③起業家精神の欠如。
   (筆者感想:現在の政府重点課題と一致しています。)
 ②の指摘に基づいて、大学における知財教育の充実が叫ばれていると言っても過言ではありませんが、大学における知的財産教育は、一部の大学の理工系学部を初めとして緒に就いたばかりであり、文系学部では寂しい限りです。
 しかし、山口大学は全学部で知財授業を必須とするなど先進的な取り組みをしており、全国の大学から注目を浴びています。

 ★山口大学の取り組み
 本学の知財基本ポリシーは、本学発の知的財産が社会で広く活用されることを通じて大学の社会貢献を推進することを目的とします(大学等技術移転促進法等の制定や改訂により変更)。したがって、本学における研究成果を社会(企業)に使って貰う必要があります。

★大学が特許を取る理由
 企業は、自社のみが使用できるのであれば、技術移転の魅力を感じ、社内了解も得られやすいです(イラスト1参照)。また、企業では、学会論文よりも特許情報に多く接しているため、特許出願は大学の研究成果をPRするためには有効であると考えます。そのため、特許出願をし、特許権を取得しています。

(出所:配付資料を基に筆者作図)

★大学で生まれた職務発明の定義
 従来、職務発明の定義が曖昧であったため、教授の個人所有とされていましたが、職務発明を「公的に支給された研究経費や大学の施設を利用して行う研究等によって職員等が創作した知的財産」と定義することによって、大学が権利主体であることを明確にしました。

★大学における研究の現状
 一部のブランド大学を除いては、公的資金に基づく研究資金が少なく、外部資金(企業からの共同研究費)を獲得しなければ研究できない状況にあると思われます。その意味で研究成果を特許権化し、技術移転することにより、研究資金を獲得することは有効であると考えます。
(筆者注:良い研究者を見つければ、良い投資かも)

★山口大学における知財教育の特徴
 ☆全学部で知財教育必須化
 工学部・経済学部・医学部等ありますが、下図に示すように全ての学部が社会・産業界において知財に関連するとの考えの下、2013年度から全ての学部において知財教育を必須化しました。
 学部により若干の相違はありますが、カリキュラムには、知的財産の全体像、著作権、研究者の知財マナー、産業財産権の基礎、デザインの保護、プログラムの保護、知財情報の解析・活用、企業知財戦略を含めており、社会人として必要な知財知識が得られるようになっています。

(出所:配付資料を基に筆者作図)

 ☆教本の自作(市販中)。
◎知的財産教本
◎これからの知財入門
◎CD付き契約マニュアル
 ☆独自の特許情報検索システム構築
24時間フリーアクセス
 ☆知財インストラクター制度
特許情報検索インストラクター、特許マップ作成インストラクター、特許図面イラストレータを試験により認定し、学内の業務において活躍の場を提供しています。

 ☆研究ノート作成
コクヨと共同研究開発し、全研究者へ配布。大学生協を通じて全大学にて販売中です。

 (筆者感想:山口大学の取り組みは、学生の就職にも有利に働くであろうし、地方再生の一助になると思われる。)



以上


第1回 知財界における2015年問題について (2013年8月5日)

第2回 米国における登録前情報提供制度の活用 (2013年9月2日)

第3回 意匠再考(1)部分意匠制度について (2013年10月1日)

第4回 意匠再考(2)関連意匠制度について (2013年11月6日)

第5回 中小企業の強みを生かそう (2013年12月3日)

第6回 「元気印」のキーワードと中小企業支援策の活用事例 (2014年1月9日)

第7回 産業財産権によって広範に保護したいときどうしますか? (2014年2月13日)

第8回 意匠登録出願へ出願変更を考慮した特許出願の留意点 (2014年3月4日)

第9回 中国においてグラフィカル・ユーザー・インターフェースの意匠が登録可能!! (2014年4月1日)

第10回 最近の進歩性判断の傾向 (2014年5月8日)

第11回 新しい商標とは?(第1回) (2014年6月3日)

第12回 商標に何を託しますか?(第2回) (2014年7月10日)

第13回 「温故知新」従来技術を活用したイノベーションへの挑戦 (2014年8月7日)

第14回 「中国においてビジネスをする際に知財面において最低限必要なこと」 (2014年9月9日)

第15回 「異議申立制度の復活に乾杯」 (2014年10月7日)

第16回 「意匠制度の国際化」 (2014年11月5日)

第17回 「意匠の国際出願の活用について」 (2014年12月9日)

第18回 「商品・役務のネーミングについて」 (2015年1月8日)

第19回 「職務発明制度について」 (2015年2月5日)

第20回 「秘密情報の保護について」 (2015年3月10日)

第21回 「秘密情報の保護についてⅡ」 (2015年4月8日)

第22回 「自撮り棒」 (2015年5月14日)

第23回 「日本弁理士会による知財キャラバンについて」 (2015年6月9日)

第24回 「プロダクトバイプロセスクレームの最高裁判決について」 (2015年7月14日)

第25回 「Karakuriからイノベーションへ」 (2015年8月17日)

第26回 「今話題の著作権について」 (2015年9月18日)

第27回 「著作権により保護される著作物とは?」 (2015年10月22日)

第28回 「TPPの知的財産分野への影響」 (2015年11月13日)

第29回 「これでよいのか知財教育」 (2015年12月14日)

第30回 「知財教育2」 (2016年1月15日)

第31回 「職務発明制度改正」その1 (2016年2月10日)

第32回 「職務発明制度改正」その2 特許法第35条第4項の解説 (2016年3月11日)

第33回 「職務発明制度改正」その3 「特許法第35条第5項の第6項における指針(案)を踏まえた解説」 (2016年4月19日)

第34回 「職務発明制度改正」その4 特許法第35条第5項の解説 (2016年5月18日)

第35回 「大幅な効率化のための職務発明規定の一例」 (2016年6月24日)

第36回 「御社の営業秘密管理は大丈夫ですか?」 (2016年7月22日)

第37回 「夏休み」弁理士会活動のPR (2016年8月23日)

第39回 「取扱説明書の保護を考える」 (2016年10月18日)

本谷 孝夫(ほんや・たかお)

本谷国際特許事務所 所長(弁理士)
℡ 03-6820-8285
『特許等知的財産に関する無料相談を実施中です。
お気軽にご相談ください』
https://honyasama.wordpress.com

略歴 日産自動車㈱で30年近く特許業務に従事
   その後旭精工㈱で知財の責任者として活躍
   (旭精工㈱は、平成22年に特許庁知財功労賞を受賞)
   平成24年11月事務所を開設。

本谷弁理士
  • 電子認証局会議
  • 株式会社日本電子公証機構 認証サービス iPROVE
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