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第36回コラム「御社の営業秘密管理は大丈夫ですか?」

2016年7月22日

 今年も暑い夏がやってきました。今回は、前回ご紹介した妻恋神社から約300メートルの距離にある、皆さんよくご存じの湯島天満宮(天神)をご紹介します。創建当時(458年)は天之手力雄命(あめのたぢからをのみこと:天岩戸を引き開けた神様)が祀られたそうですが、その後菅原道真公も奉られるようになり、江戸時代には文教大いに賑わうように幕府から庇護を受けたとのことです。御茶ノ水駅から湯島聖堂~神田明神~妻恋神社~湯島天神の史跡巡りも楽しいものです。

 2016年4月25日付の日本経済新聞電子版に、(株)エディオンが上新電機(株)に対し、営業秘密の不正使用に対する差止めと50億円の損害賠償請求訴訟を提訴したとの記事が掲載されました。事件の概要は、下図に示すように、エディオンの元課長が、上新電機に転職した際、エディオンのリフォーム事業に関する営業秘密を不正に入手し、上新電機における業務に使用していることに対する損害賠償等の請求です(不競法第2条第1項第8号)。この直前、元課長の営業秘密不正取得に対する懲役2年、執行猶予3年、罰金100万円(求刑懲役3年、罰金100万円)の刑が確定しました。しかし大阪検察は、元課長の事件に関連して「利益を得たとは評価しがたい」として上新電機に対しては起訴猶予にしました。
 そこで、憤懣やるかたないエディオンは、当該刑事事件において提出された証拠類約3万点を精査して上新電機に対し提訴したものと思われます。
 上新電機は善意で元課長を雇用したのかも知れません。上新電機が本訴訟で勝訴したとしても、裁判費用や社内工数、及び、企業イメージの低下を考えるとその代償は極めて大きく、同業者を雇用する際は、十分な注意が必要です。

 もう少し詳しい事情を説明すると、元課長はエディオン在職中に、会社から貸与されたPCに無断で遠隔操作ソフトをインストールし、上新電機に入社後会社から貸与されたPCを使ってエディオン社内のPCにアクセスし、不正に4件の秘密情報を入手し、上新電機内で開示しました。さらに、元課長はエディオンにいる元部下に秘密情報をPDFファイルによって送信させていました。

 元課長はなぜこのようなことができたのでしょうか?

エディオンは秘密情報管理として以下の措置をとっていました。
 従業員のPCへのアクセス権として、IDとパスワード設定
 退職時の誓約書において、1年間同業者勤務禁止規定

 通常、退職すれば、IDとパスワードはすみやかに無効にされ、遠隔操作ソフトをインストールしたとしても、アクセスできないと思います。
 しかし、エディオンには、特別なルールがあったのです。従業員が退職しても、90日間は、業務のため同一IDとパスワードによってアクセス可能であったのです。そのルールを悪用して元課長は犯行に及んだわけです。
 更に、元課長は、退職二ヶ月後に上新電機に入社しており、1年間の同業他社への転職禁止誓約に完全に違反しています。

 以上からおわかりのように、元課長はエディオンのシステム上の穴をついて秘密情報を入手したわけです。
 エディオンとしても90日間同一IDとパスワードでアクセス可能とするなど脇が甘いとしか言いようがありません。
 脇の甘さは、性善説の発想より生じたもとのと思われます。

 ルールを作成してもそれを実行するのは人(従業員)であることから、秘密情報を守るためには法令遵守精神を従業員に根付かせると共に、不満を持たせないことが最も重要です。
 哀しい話ですが、秘密情報を守るには、性悪説に則ってルールを作成し、運用することが重要と思います。

 
 
以上
 
 

第1回 知財界における2015年問題について (2013年8月5日)

第2回 米国における登録前情報提供制度の活用 (2013年9月2日)

第3回 意匠再考(1)部分意匠制度について (2013年10月1日)

第4回 意匠再考(2)関連意匠制度について (2013年11月6日)

第5回 中小企業の強みを生かそう (2013年12月3日)

第6回 「元気印」のキーワードと中小企業支援策の活用事例 (2014年1月9日)

第7回 産業財産権によって広範に保護したいときどうしますか? (2014年2月13日)

第8回 意匠登録出願へ出願変更を考慮した特許出願の留意点 (2014年3月4日)

第9回 中国においてグラフィカル・ユーザー・インターフェースの意匠が登録可能!! (2014年4月1日)

第10回 最近の進歩性判断の傾向 (2014年5月8日)

第11回 新しい商標とは?(第1回) (2014年6月3日)

第12回 商標に何を託しますか?(第2回) (2014年7月10日)

第13回 「温故知新」従来技術を活用したイノベーションへの挑戦 (2014年8月7日)

第14回 「中国においてビジネスをする際に知財面において最低限必要なこと」 (2014年9月9日)

第15回 「異議申立制度の復活に乾杯」 (2014年10月7日)

第16回 「意匠制度の国際化」 (2014年11月5日)

第17回 「意匠の国際出願の活用について」 (2014年12月9日)

第18回 「商品・役務のネーミングについて」 (2015年1月8日)

第19回 「職務発明制度について」 (2015年2月5日)

第20回 「秘密情報の保護について」 (2015年3月10日)

第21回 「秘密情報の保護についてⅡ」 (2015年4月8日)

第22回 「自撮り棒」 (2015年5月14日)

第23回 「日本弁理士会による知財キャラバンについて」 (2015年6月9日)

第24回 「プロダクトバイプロセスクレームの最高裁判決について」 (2015年7月14日)

第25回 「Karakuriからイノベーションへ」 (2015年8月17日)

第26回 「今話題の著作権について」 (2015年9月18日)

第27回 「著作権により保護される著作物とは?」 (2015年10月22日)

第28回 「TPPの知的財産分野への影響」 (2015年11月13日)

第29回 「これでよいのか知財教育」 (2015年12月14日)

第30回 「知財教育2」 (2016年1月15日)

第31回 「職務発明制度改正」その1 (2016年2月10日)

第32回 「職務発明制度改正」その2 特許法第35条第4項の解説 (2016年3月11日)

第33回 「職務発明制度改正」その3 「特許法第35条第5項の第6項における指針(案)を踏まえた解説」 (2016年4月19日)

第34回 「職務発明制度改正」その4 特許法第35条第5項の解説 (2016年5月18日)

第35回 「大幅な効率化のための職務発明規定の一例」 (2016年6月24日)

第37回 「「夏休み」弁理士会活動のPR」 (2016年8月23日)

第38回 「山口大学の知財活動」 (2016年9月26日)

第39回 「取扱説明書の保護を考える」 (2016年10月18日)

本谷 孝夫(ほんや・たかお)

本谷国際特許事務所 所長(弁理士)
℡ 03-6820-8285
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https://honyasama.wordpress.com

略歴 日産自動車㈱で30年近く特許業務に従事
   その後旭精工㈱で知財の責任者として活躍
   (旭精工㈱は、平成22年に特許庁知財功労賞を受賞)
   平成24年11月事務所を開設。

本谷弁理士
  • 電子認証局会議
  • 株式会社日本電子公証機構 認証サービス iPROVE
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