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コラム概要

第28回 「TPPの知的財産分野への影響」
                                                2015年11月13日

 今回は、弊所より徒歩5分位の靖国通りを挟んだ向かいにある松尾神社をご紹介します。
 祭神は「宇迦之御魂命」で、稲荷神を祀る神社であり、明治期に神田神社の兼務社となったようです。江戸時代から京都の松尾大社を勧請してきたとする説や、神田明神の境内にあった松尾神社が移設されたとの説等種々有りようですが、子細は不明です。しかし、現在の場所は、明暦の大火後に「神田市場」があった場所であり、関東大震災で壊滅的ダメージを受けて秋葉原へ移転するまで、江戸から大正にかけて東京の台所をになってきた市場の守り神として、崇められていただろうことが伺い知れます。現在は畳一畳ぐらいのミニ社ですが、銅製の立派な賽銭箱から当時の繁栄が想像されます。

 さて、今回は、5年半の歳月をかけて本年10月5日に大筋合意に達したTPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)、特に知的財産面について考えたいと思います。本協定における、知的財産権の保護と利用の推進は、TRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)を上回る内容になっています。詳細は、末尾に添付しました全文を参照ください。
 知財面の内容を簡単に下記します。
 これらを見ると、我が国にとっては大凡プラスに作用する取り決めであると考えます。
 特に、商標出願手続きにおいて、マドプロが使用できるようになることは朗報でしょう。また、特許における新規性喪失の例外の適用が12月になることも有効であると思います。著作権は70年に延長され、痛し痒しですが、漫画・アニメ業界にとっては朗報であると思います。
 以上のように、知財面では我が国にとって好ましい条約であり、発効に備えて準備を開始すべきであると考えます。

〇 商標
  ①マドプロ及びシンガポール商標法条約の締結義務づけ。
  ②商標の不正使用について、法的損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける。
〇 特許
  ①不合理な権利期間短縮を回復する特許期間延長制度
  ②新規性喪失例外規定(12月)の義務づけ
〇 オンラインの著作権侵害の防止
  権利者通報によるプロバイダー削除することによるプロバイダーの賠償免責制度の導入
〇 知的財産保護の権利行使
  WTO・TRIPS協定やACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)と同等又はそれを上回る規範の導入
〇 著作権
  ①著作物(映画を含む)、実演又はレコードの保護期間
    *著作者の死から少なくとも70年迄
    *自然人によらない著作物、実演又はレコードの権利者の許諾を得た最初の公表の年の終わりから
     少なくとも70年
    *非公表の著作物、実演又はレコードは、その創作の年の終わりから少なくとも70年
  ②故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪。但し、大きな損害がある場合に限る。
  ③著作権侵害について、法的損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける。
〇 地理的表示
  地理的表示の保護又は認定に関し、
   *過度の負担の禁止
   *保護申請を公表し、異議手続を定める
   *保護又は認定の取り消し制度を定める

★発効の見込み
 問題は、何時発効するかと言うことです。
 発効は、以下の3タイプが考えられますが、いずれにせよ、日米が国内手続きを完了することが必要です。日本はともかく、来年、大統領選挙を控える米国において、国内手続きを完了できるかははなはだ疑問です。
 当面は、米国の動きに注目しましょう。

 ①署名から2年以内に全12カ国が国内手続を完了した場合、その旨の最後の国の通知日から60日後
 ②署名から2年が経過した時点で全12カ国の国内手続きが完了していない場合、その時点で国内手続きを完了した国
  が6カ国以上であり、それらのGDPの合計が全12カ国の総計の85%以上であれば、署名後2年が経過した日から60
  日後
 ③署名から2年が経過した時点で6カ国以上、かつ、85%以上の要件が満たされていない場合、同要件が満たされた日
  から60日後

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要 (出所:平成27年10月5日付、内閣官房TPP政府対策本部発行環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要)
【TPP加盟国】

【TPP概要】
第18章.知的財産
 TPP協定で対象となる知的財産は、商標、地理的表示、特許、意匠、著作権、開示されていない情報等である。知的財産章は、これらの知的財産につき、WTO協定の一部である「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)を上回る水準の保護と,知的財産権の行使(民事上及び刑事上の権利行使手続並びに国境措置等)について規定し、もって、知的財産権の保護と利用の推進を図る内容となっている。

知的財産章の主な規定は,以下のようなものである。
〇 医薬品の知的財産保護を強化する制度の導入
 ①特許期間延長制度(販売承認の手続の結果による効果的な特許期間の不合理な短縮について特許権者に補償
  するために特許期間の調整を認める制度)
 ②新薬のデータ保護期間に係るルールの構築
 ③特許リンケージ制度(後発医薬品承認時に有効特許を考慮する仕組み)
〇 商標
 ・商標権の取得の円滑化:国際的な商標の一括出願を規定した標章の国際登録を定めるマドリッド協定議定書
 (マレーシア、カナダ、ペルー等が未締結)又は商標出願手続の国際的な制度調和と簡略化を図るためのシンガ
  ポール商標法条約(マレーシア、カナダ、ペルー、メキシコ等が未締結)の締結を義務付け。
 ・商標の不正使用について、法定損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける。
〇 特許
 ・特許期間延長制度(出願から5年、審査請求から3年を超過した特許出願の権利化までに生じた不合理な遅滞に
  つき、特許期間の延長を認める制度)の導入の義務付け。
 ・ 新規性喪失の例外規定(特許出願前に自ら発明を公表した場合等に、公表日から12月以内にその者がした特許
  出願に係る発明は、その公表によって新規性等が否定されないとする規定)の導入を義務付け。
〇 オンラインの著作権侵害の防止
  インターネット上の著作権侵害コンテンツの対策のため、権利者からの通報を受けて、プロバイダー事業者が対応
 することで賠償免責を得る制度を導入。プロバイダー事業者に著作権侵害防止のためのインセンティブを与える制度
 を担保。
〇 知的財産権保護の権利行使
 WTO・TRIPS協定やACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)と同等又はそれを上回る規範の導入。
(例)・不正商標商品又は著作権侵害物品の疑義のある、輸入されようとしている物品、輸出されようとしている物品、
    若しくは領域を通過する物品について、権限のある当局が職権で差止め等の国境措置を行う権限を付与
   (ただし,通過物品については,荷宛国への侵害疑義物品情報提供をもって代替することが認められる)
   ・営業秘密の不正取得、商標を侵害しているラベルやパッケージの使用、映画盗撮に対する刑事罰義務化
   ・衛星放送やケーブルテレビの視聴を制限している暗号を不正に外す機器の製造・販売等への刑事罰及び
    民事上の救済措置を導入。
〇 著作権
 著作権に関しては次のルール等が規定されている。
   ・著作物(映画を含む)、実演又はレコードの保護期間を以下の通りとする。
    ① 自然人の生存期間に基づき計算される場合には、著作者の生存期間及び著作者の死から少なくとも70年
    ② 自然人の生存期間に基づき計算されない場合には、次のいずれかの期間
     (ⅰ) 当該著作物、実演又はレコードの権利者の許諾を得た最初の公表の年の終わりから少なくとも70年
     (ⅱ) 当該著作物、実演又はレコードの創作から一定期間内に権利者の許諾を得た公表が行われない場合
       には、当該著作物、実演又はレコードの創作の年の終わりから少なくとも70年
   ・故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の
    収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。
   ・著作権等の侵害について、法定損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける。
〇 地理的表示(GI)
 地理的表示の保護又は認定のための行政手続を定める場合、①過度の負担となる手続を課することなく申請等を処理すること、②申請等の対象である地理的表示を公開し、これに対して異議を申し立てる手続を定めること、③地理的表示の保護又は認定の取消しについて定めること等が規定されている。

(参考)
2007年度~2011年度において日本で特許出願等を行った国内の企業・団体のうち合計出願件数の多い企業・団体上位 8081 社に以下のアンケートを実施(そのうち回答のあった 4,323 社についてアンケート結果)。

以上

第1回 知財界における2015年問題について (2013年8月5日)

第2回 米国における登録前情報提供制度の活用 (2013年9月2日)

第3回 意匠再考(1)部分意匠制度について (2013年10月1日)

第4回 意匠再考(2)関連意匠制度について (2013年11月6日)

第5回 中小企業の強みを生かそう (2013年12月3日)

第6回 「元気印」のキーワードと中小企業支援策の活用事例 (2014年1月9日)

第7回 産業財産権によって広範に保護したいときどうしますか? (2014年2月13日)

第8回 意匠登録出願へ出願変更を考慮した特許出願の留意点 (2014年3月4日)

第9回 中国においてグラフィカル・ユーザー・インターフェースの意匠が登録可能!! (2014年4月1日)

第10回 最近の進歩性判断の傾向 (2014年5月8日)

第11回 新しい商標とは?(第1回) (2014年6月3日)

第12回 商標に何を託しますか?(第2回) (2014年7月10日)

第13回 「温故知新」従来技術を活用したイノベーションへの挑戦 (2014年8月7日)

第14回 「中国においてビジネスをする際に知財面において最低限必要なこと」 (2014年9月9日)

第15回 「異議申立制度の復活に乾杯」 (2014年10月7日)

第16回 「意匠制度の国際化」 (2014年11月5日)

第17回 「意匠の国際出願の活用について」 (2014年12月9日)

第18回 「商品・役務のネーミングについて」 (2015年1月8日)

第19回 「職務発明制度について」 (2015年2月5日)

第20回 「秘密情報の保護について」 (2015年3月10日)

第21回 「秘密情報の保護についてⅡ」 (2015年4月8日)

第22回 「自撮り棒」 (2015年5月14日)

第23回 「日本弁理士会による知財キャラバンについて」 (2015年6月9日)

第24回 「プロダクトバイプロセスクレームの最高裁判決について」 (2015年7月14日)

第25回 「Karakuriからイノベーションへ」 (2015年8月17日)

第26回 「今話題の著作権について」 (2015年9月18日)

第27回 「著作権により保護される著作物とは?」 (2015年10月22日)

第29回 「これで良いのか知財教育」 (2015年12月14日)

第30回 「知財教育2」 (2016年1月15日)

第31回 「職務発明制度改正」その1 (2016年2月10日)

第32回 「職務発明制度改正」その2 特許法第35条第4項の解説 (2016年3月11日)

第33回 「職務発明制度改正」その3 「特許法第35条第5項の第6項における指針(案)を踏まえた解説」 (2016年4月19日)

第34回 「職務発明制度改正」その4 特許法第35条第5項の解説 (2016年5月18日)

第35回 「大幅な効率化のための職務発明規定の一例」 (2016年6月24日)

第36回 「御社の営業秘密管理は大丈夫ですか?」 (2016年7月22日)

第37回 「「夏休み」弁理士会活動のPR」 (2016年8月23日)

第38回 「山口大学の知財活動」 (2016年9月26日)

第39回 「取扱説明書の保護を考える」 (2016年10月18日)

本谷 孝夫(ほんや・たかお)

本谷国際特許事務所 所長(弁理士)
℡ 03-6820-8285
『特許等知的財産に関する無料相談を実施中です。
お気軽にご相談ください』
https://honyasama.wordpress.com

略歴 日産自動車㈱で30年近く特許業務に従事
   その後旭精工㈱で知財の責任者として活躍
   (旭精工㈱は、平成22年に特許庁知財功労賞を受賞)
   平成24年11月事務所を開設。

本谷弁理士
  • 電子認証局会議
  • 株式会社日本電子公証機構 認証サービス iPROVE
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