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第22回 「自撮り棒」
                                                2015年05月14日

事務所周辺を散策すると、小さな神社が多いことに気がつきます。今回はその1つである講武稲荷神社をご紹介します。この神社の名の由来は、この地に江戸幕府の武芸訓練機関及び訓練所であった講武所があったことからつけられました。場所は裏秋葉原というべきところにあり、ほんの20~30メート離れると、メイドカフェ等々秋葉原カルチャー街があります。江戸時代の地図と比較すると、敷地は大幅に縮小されましたが、位置的には殆ど同じです。

 さて今回は、特許権等の維持年金支払いについて考えたいと思います。
この話題の発端は「自撮り棒」です。

 ご存じのように、「自撮り棒」は我が国日本において、ミノルタカメラの従業員によって発明され、日本では実用新案出願されましたが権利化されていません。下表1に示すように、米国には1984年に優先権主張出願され、翌年の1985年に特許されました。
 しかし、年金不納により1993年に失効しました。本来2002年迄有効なところ、7.5年次の年金を納付しなかったためです。

 ご参考に米国特許のクレーム1を下記に記します。
「1. A telescopic extender for supporting a compact camera, comprising: telescopic rod means collapsible and extendable along a predetermined axis;
 a grip firmly connected to one end of said telescopic rod means in a manner not to rotate relative to said telescopic rod means, said grip being capable of housing therein said telescopic rod means when said telescopic rod means is completely collapsed;
 a head member firmly connected to the other end of said telescopic rod means in a manner not to rotate relative to said telescopic rod means;
 a screw member supported by said head member so as to be rotatable about an axis which is perpendicular to said predetermined axis, said screw member being fittable into a screw hole provided on a camera body for firmly attaching said head member to said camera body; and
 preventing means provided on said telescopic rod means for preventing said telescopic rod means from rotating relative to said grip and head member.」

 結構広いクレームですね。現在販売されている自撮り棒は本クレームに含まれるのではないでしょうか?
 また、被引用が22件も有りますので、後願の自撮り棒はこのミノルタカメラの特許によって拒絶されたのではないでしょうか?
 この発明はミノルタカメラによって実用化され、1983年にエックステンダーなる商品名でコンパクトカメラ用として発売しましたが、あまり売れなかったようです(写真参照)。コンパクトカメラといってもまだまだ重く、長尺棒の先端に装着して写真を撮ることは、プロレスラーならともかく、一般人には大変困難なことだったと思われます。

 また、同社は1992年に、ハネウエル社とのオートフォーカスに関する特許侵害訴訟において、当時のレートで165億円もの巨額の損害賠償の判決が出された直後の時期でした。
 当然の事ながら、特許権維持の検討会において、「放棄」の結論になったと推測します。
 この時代を振り返ってみると、チャゲ・アスの「YAH YAH YAH/夢の番人」、サザンの「エロティカ・セブン」や松任谷由実「真夏の夜の夢」がヒットし、ジュリアナ東京の最盛期でした。この時代、ウォークマンに代表される携帯音楽機器は出現していましたが、現在の携帯情報端末の発展は誰が予想出来たでしょうか?巨額損害賠償問題が無くとも放棄されてのではないでしょうか?
 しかし、テープレコーダーの小型化・軽量化の変遷を考慮すると、カメラの急速な小型化・軽量化も予想出来たような気がしないではありません。
 特許権等の維持見直しは、どこでも実行していると思われます。古いデータですが、巨人IBMは、下図に示すように米国特許について、4年毎の維持年金支払いタイミングに合わせて維持特許の棚卸しを行い、維持特許を大幅に減しています。

 御社においても、当然、維持特許の見直しを行っていると思います。苦労して取得した特許権等であるにも拘わらず、放棄することは切なく、かつ、悩ましい問題だと考えます。
 そこで、権利存続検討に用いる評価を下表2に纏めましたのでご紹介します。
 原則的に、全てA又はBランクは、権利維持です。Cが1又は2個混じっても維持する場合があります。全てDの場合は、原則放棄です。
 営業的視点は営業部門に評価頂き、自社特許について認識を深めてもらいます。
 月並みの評価法ですが、皆様のご参考になれば幸です。

最後に、自撮り棒を使用する際は、周囲への気配りをお忘れ無く!!

以上

第1回 知財界における2015年問題について (2013年8月5日)

第2回 米国における登録前情報提供制度の活用 (2013年9月2日)

第3回 意匠再考(1)部分意匠制度について (2013年10月1日)

第4回 意匠再考(2)関連意匠制度について (2013年11月6日)

第5回 中小企業の強みを生かそう (2013年12月3日)

第6回 「元気印」のキーワードと中小企業支援策の活用事例 (2014年1月9日)

第7回 産業財産権によって広範に保護したいときどうしますか? (2014年2月13日)

第8回 意匠登録出願へ出願変更を考慮した特許出願の留意点 (2014年3月4日)

第9回 中国においてグラフィカル・ユーザー・インターフェースの意匠が登録可能!! (2014年4月1日)

第10回 最近の進歩性判断の傾向 (2014年5月8日)

第11回 新しい商標とは?(第1回) (2014年6月3日)

第12回 商標に何を託しますか?(第2回) (2014年7月10日)

第13回 「温故知新」従来技術を活用したイノベーションへの挑戦 (2014年8月7日)

第14回 「中国においてビジネスをする際に知財面において最低限必要なこと」 (2014年9月9日)

第15回 「異議申立制度の復活に乾杯」 (2014年10月7日)

第16回 「意匠制度の国際化」 (2014年11月5日)

第17回 「意匠の国際出願の活用について」 (2014年12月9日)

第18回 「商品・役務のネーミングについて」 (2015年1月8日)

第19回 「職務発明制度について」 (2015年2月5日)

第20回 「秘密情報の保護について」 (2015年3月10日)

第21回 「秘密情報の保護についてⅡ」 (2015年4月8日)

第23回 「日本弁理士会による知財キャラバンについて」 (2015年6月9日)

第24回 「プロダクトバイプロセスクレームの最高裁判決について」 (2015年7月14日)

第25回 「Karakuriからイノベーションへ」 (2015年8月17日)

第26回 「今話題の著作権について」 (2015年9月18日)

第27回 「著作権により保護される著作物とは?」 (2015年10月22日)

第28回 「TPPの知的財産分野への影響」 (2015年11月13日)

第29回 「これで良いのか知財教育」 (2015年12月14日)

第30回 「知財教育2」 (2016年1月15日)

第31回 「職務発明制度改正」その1 (2016年2月10日)

第32回 「職務発明制度改正」その2 特許法第35条第4項の解説 (2016年3月11日)

第33回 「職務発明制度改正」その3 「特許法第35条第5項の第6項における指針(案)を踏まえた解説」 (2016年4月19日)

第34回 「職務発明制度改正」その4 特許法第35条第5項の解説 (2016年5月18日)

第35回 「大幅な効率化のための職務発明規定の一例」 (2016年6月24日)

第36回 「御社の営業秘密管理は大丈夫ですか?」 (2016年7月22日)

第37回 「「夏休み」弁理士会活動のPR」 (2016年8月23日)

第38回 「山口大学の知財活動」 (2016年9月26日)

第39回 「取扱説明書の保護を考える」 (2016年10月18日)

本谷 孝夫(ほんや・たかお)

本谷国際特許事務所 所長(弁理士)
℡ 03-6820-8285
『特許等知的財産に関する無料相談を実施中です。
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https://honyasama.wordpress.com

略歴 日産自動車㈱で30年近く特許業務に従事
   その後旭精工㈱で知財の責任者として活躍
   (旭精工㈱は、平成22年に特許庁知財功労賞を受賞)
   平成24年11月事務所を開設。

本谷弁理士
  • 電子認証局会議
  • 株式会社日本電子公証機構 認証サービス iPROVE
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