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第16回 「意匠制度の国際化」
                                               2014年11月05日

 2週連続の台風が去り、スポーツの秋、読書の秋等々何をするにも良い季節が来ました。

 さて、第186国会において特許法及び商標法の他、意匠法が大幅に改正されました。
 意匠法改正によって、我が国は「ハーグ協定ジュネーブアクト」(以下「ハーグ協定」という。)に加盟し、ハーグ協定のシステムによる意匠の国際出願への対応が可能になりました。本改正は早ければ、2015年4月1日から施行されます。そこで今回は本制度の概要を主に図表を用いて視覚的に説明し、次回に本制度の活用法をご紹介します。

1、締約国
 図1に示すように、現在は主要国としてEU及び韓国が加盟していますが、米国及び我が国が加盟し、更にASEAN諸国が加盟すれば使い勝手の良い制度であると考えます。

[図1]赤色:既加盟国 黄色:加盟予定国 韓国2012年加盟、日本2015年加盟予定、中国も加盟を検討中

(出典:第14回意匠制度小委員会参考資料3ヘーグ協定加盟国・加盟予定国マップ)

2、出願手続きについて
 本制度を、既に馴染みが深い商標の国際出願に関するマドリッドプロトコルと対比して表1に示しました。
 表1に示すように、本制度は一出願で複数国に出願可能であると共に、自己指定は可能ですが、事後指定は出来ません。また、本制度においては本国官庁の概念は無く、全て国際事務局に対し手続きすることになります。したがって、我が国の特許庁は単なる仲介官庁としての位置づけになります。

3、図面について
 出願は図面又は写真であり、一定の要件を満たす現物による出願は出来ません。また、自己指定可能ですので、我が国に基礎出願をしなくともよいので手間が省けます。
 国際事務局に直接出願することも出来ますし、我が国特許庁を経由して間接出願することも出来ます。

 さらに、図面又は写真は、図3に示すように、国内出願の6面図等から1面図での出願も許され、図面作成労力及びコストの削減が見込まれます。

4、出願意匠について
 ロカルノ協定における国際意匠分類の同一クラスであれば、複数意匠を1出願に含めることができます。我が国における関連意匠よりも、広範囲な意匠を1出願に含めることが出来、これによってもコスト削減できそうです。

5、新規性喪失の例外について
 商品の売れ行きを見て意匠登録出願をしようと考える出願人は多く、新規性喪失の例外の適用は極めて重要な制度です。表2に示すように、原則、出願日から6ケ月後に公開がなされ、当該公開日から30日以内であれば、新規性喪失の例外の適用を申し立てることができます。

6、公開について
 前述したように、原則、出願日から6ヶ月後に公開されるので、発売時期との間に開きがある場合、早期公開請求又は30月以内での公開繰り延べの請求をする必要があります。

7、拒絶理由について
 原則、拒絶の通報は、公開日から6ヶ月以内に成されます。しかし、アメリカ等の審査国は、12月以内にするよう宣言することができます。

拒絶の通報は、図4に示すように、国際事務局より送付され、現地代理人を介して指定国官庁に手続きしなければなりません。

8、料金
 料金は国際事務局にスイスフランによって前納します。
ハーグ協定、OHIM直接出願、ハーグ協定日本自己指定、及び、日本直接出願の試算をしてみました。OHIM出願は1カ国でもコスト削減効果が認められますが、我が国出願である場合、1カ国では出願費用面ではマイナス効果です。複数国に出願する場合にはメリットがあります。

※1ハーグ協定
ハーグ協定とは、意匠の国際出願の手続きを定めた条約です。特許におけるPCT、商標におけるマドリッドプロトコルに対応する制度といえます。従来、ヨーロッパの無審査国(審査をせずに登録される国)を中心に46の国及び機関(2013年末・特許庁)が加盟していましたが、既に韓国は加盟済みであり、今後、日本、米国などの審査国が加盟する予定です。
※2ロカルノ協定
ロカルノ協定とは、正式には「1979年10月2日に改正された意匠の国際分類を制定する1968年10月8日のロカルノ協定」といい、この協定に基づいて意匠の国際分類が作成され、2011年12月現在52か国が加盟している。
この国際意匠分類は英語とフランス語で作成されており、32のクラス(物品分野や物品群を表す)と219のサブクラス(物品を表す)で構成され、専ら意匠を管理する性格のものとして作られている。
日本、米国はロカルノ協定に加盟してないが、両国の意匠公報は国際意匠分類を併記し、国際意匠分類を利用する国において、先行調査等が可能なようにしている。
(出典:特許庁第14回意匠制度小委員会配付資料1)

次回に続く。


 

第1回 知財界における2015年問題について (2013年8月5日)

第2回 米国における登録前情報提供制度の活用 (2013年9月2日)

第3回 意匠再考(1)部分意匠制度について (2013年10月1日)

第4回 意匠再考(2)関連意匠制度について (2013年11月6日)

第5回 中小企業の強みを生かそう (2013年12月3日)

第6回 「元気印」のキーワードと中小企業支援策の活用事例 (2014年1月9日)

第7回 産業財産権によって広範に保護したいときどうしますか? (2014年2月13日)

第8回 意匠登録出願へ出願変更を考慮した特許出願の留意点 (2014年3月4日)

第9回 中国においてグラフィカル・ユーザー・インターフェースの意匠が登録可能!! (2014年4月1日)

第10回 最近の進歩性判断の傾向 (2014年5月8日)

第11回 新しい商標とは?(第1回) (2014年6月3日)

第12回 商標に何を託しますか?(第2回) (2014年7月10日)

第13回 「温故知新」従来技術を活用したイノベーションへの挑戦 (2014年8月7日)

第14回 「中国においてビジネスをする際に知財面において最低限必要なこと」 (2014年9月9日)

第15回 「異議申立制度の復活に乾杯」 (2014年10月7日)

第17回 「意匠の国際出願の活用について」 (2014年12月9日)

第18回 「商品・役務のネーミングについて」 (2015年1月8日)

第19回 「職務発明制度について」 (2015年2月5日)

第20回 「秘密情報の保護について」 (2015年3月10日)

第21回 「秘密情報の保護についてⅡ」 (2015年4月8日)

第22回 「自撮り棒」 (2015年5月14日)

第23回 「日本弁理士会による知財キャラバンについて」 (2015年6月9日)

第24回 「プロダクトバイプロセスクレームの最高裁判決について」 (2015年7月14日)

第25回 「Karakuriからイノベーションへ」 (2015年8月17日)

第26回 「今話題の著作権について」 (2015年9月18日)

第27回 「著作権により保護される著作物とは?」 (2015年10月22日)

第28回 「TPPの知的財産分野への影響」 (2015年11月13日)

第29回 「これで良いのか知財教育」 (2015年12月14日)

第30回 「知財教育2」 (2016年1月15日)

第31回 「職務発明制度改正」その1 (2016年2月10日)

第32回 「職務発明制度改正」その2 特許法第35条第4項の解説 (2016年3月11日)

第33回 「職務発明制度改正」その3 「特許法第35条第5項の第6項における指針(案)を踏まえた解説」 (2016年4月19日)

第34回 「職務発明制度改正」その4 特許法第35条第5項の解説 (2016年5月18日)

第35回 「大幅な効率化のための職務発明規定の一例」 (2016年6月24日)

第36回 「御社の営業秘密管理は大丈夫ですか?」 (2016年7月22日)

第37回 「「夏休み」弁理士会活動のPR」 (2016年8月23日)

第38回 「山口大学の知財活動」 (2016年9月26日)

第39回 「取扱説明書の保護を考える」 (2016年10月18日)

本谷 孝夫(ほんや・たかお)

本谷国際特許事務所 所長(弁理士)
℡ 03-6820-8285
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https://honyasama.wordpress.com

略歴 日産自動車㈱で30年近く特許業務に従事
   その後旭精工㈱で知財の責任者として活躍
   (旭精工㈱は、平成22年に特許庁知財功労賞を受賞)
   平成24年11月事務所を開設。

本谷弁理士
  • 電子認証局会議
  • 株式会社日本電子公証機構 認証サービス iPROVE
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