+ コラム第13回|株式会社日本電子公証機構
  • TOP
  • コラム

コラム

コラム概要

第13回 「温故知新」従来技術を活用したイノベーションへの挑戦       2014年08月07日

 この度、繊維機械関連の大きな展示会を見るため初めて上海を訪れました。
 成田から3.5時間のフライトです。到着した日が丁度日曜日であったため、上海の銀座に相当する場所に行ってみました。日本では老若男女といいますが、老はほとんどおらず、若者たちの熱気と活力が肌から伝わってきました(写真1参照)。

 訪問した繊維機械関連の展示会において、某メーカーの説明員の話が印象に残ったので、以下に紹介致します。読者における新事業の取り組みのご参考になれば幸いです。

 繊維産業(織物や編物)と聞くと、皆さんはどの様に感じられているでしょうか? 恐らく、もう時代遅れで日本ではやっていけない衰退した産業であるとイメージされると思います。
 しかし、この説明員によると、繊維産業は地球規模で要求される「環境」を考慮すると、今後の重要な「鍵」技術になるというのです。「環境」につながるキーワードとして、この説明員は「省資源」及び「軽量化」(軽量化は、大きな意味で省資源に含まれるかもしれません)を挙げました。
 ではなぜ、繊維産業が「省資源」及び「軽量化」に密接に関連するのでしょうか?

 まず「省資源」ですが、従来は平面的な材料を機械加工やプレス加工によって必要に応じた立体的な形状に加工して様々な製品を作ってきました。
 平面から立体への変換には、材料・エネルギー・工数等、様々な、多くの無駄が生じます。これらの無駄を省くには、工程を省く必要があります。そのためには、編物を利用して一気に立体的形状にすれば、材料の無駄を省いて低コスト化が出来、又、途中の工程を省くことにより、消費エネルギーも減少させることが出来るのです。

 次に「軽量化」ですが、従来、機器の構造材としては、金属材料、特にコストを考慮すると、鉄が多く用いられています。鉄の比重は7.6であり、重量は重くなります。これを軽量化するには、アルミやマグネシウムを使う必要がありますが、高価になってしまいます。また、樹脂化も考えられますが、高強度の樹脂は同様に高価であると共に熱に弱い問題があります。そこで炭素繊維の活用が提案されていますが、炭素繊維品も同様に高価であるという問題があります。
炭素繊維品が高い理由は、折れやすい性質を補うのに、手作業による特殊技術が必要であるためです。
 この手作業を機械化できれば、高品質・軽量化・高強度化・低コストの構造材を得ることが出来ます。この機械化のため、説明員は編物の技術を利用することが出来るというのです。
 旧来の編物技術を活用して機械化が出来れば、高価な炭素繊維品もコストが下がり、様々な用途に使われるようになるでしょう。

 例えば、自動車の構造材を例にとって考えると、
 自動車は現在、石油エネルギーの消費によるCO2増加の大きな環境負荷原因になっています。一方、人類の生活上、車は必須の道具になっており、廃止したり、減少させることは出来ません。そこで、燃費を向上させることが重要になっています。そのため、軽くて強度の高い炭素繊維に置き換えることが試みられています。しかし、炭素繊維は折れやすいため、注意深い取り扱いが必須であり、機械化は一部に限られていることから、高コストの原因になると共に普及の足かせになっています。そこで編物の技術を活用したイノベーションによって、一気に立体的な最終部品を機械的に製造できれば、材料やエネルギーの無駄を大幅に削減できると共に、自動車の運用においても燃費向上につながり、地球環境改善に大きく貢献すること必定です。

 このイノベーションは容易ではありませんが、地球環境改善の一手段としての魅力を感じると共に、旧来の技術を使ってイノベーションを起こそうとする発想力に驚かされ、読者の皆様も、このような視点で製品開発をされては如何と思い、紹介した次第です。

(写真1)上海の繁華街

(展示会の会場の写真)

以上


 

第1回 知財界における2015年問題について (2013年8月5日)

第2回 米国における登録前情報提供制度の活用 (2013年9月2日)

第3回 意匠再考(1)部分意匠制度について (2013年10月1日)

第4回 意匠再考(2)関連意匠制度について (2013年11月6日)

第5回 中小企業の強みを生かそう (2013年12月3日)

第6回 「元気印」のキーワードと中小企業支援策の活用事例 (2014年1月9日)

第7回 産業財産権によって広範に保護したいときどうしますか? (2014年2月13日)

第8回 意匠登録出願へ出願変更を考慮した特許出願の留意点 (2014年3月4日)

第9回 中国においてグラフィカル・ユーザー・インターフェースの意匠が登録可能!! (2014年4月1日)

第10回 最近の進歩性判断の傾向 (2014年5月8日)

第11回 新しい商標とは?(第1回) (2014年6月3日)

第12回 商標に何を託しますか?(第2回) (2014年7月10日)

第14回 「中国においてビジネスをする際に知財面において最低限必要なこと」 (2014年9月9日)

第15回 「異議申立制度の復活に乾杯」 (2014年10月7日)

第16回 「意匠制度の国際化」 (2014年11月5日)

第17回 「意匠の国際出願の活用について」 (2014年12月9日)

第18回 「商品・役務のネーミングについて」 (2015年1月8日)

第19回 「職務発明制度について」 (2015年2月5日)

第20回 「秘密情報の保護について」 (2015年3月10日)

第21回 「秘密情報の保護についてⅡ」 (2015年4月8日)

第22回 「自撮り棒」 (2015年5月14日)

第23回 「日本弁理士会による知財キャラバンについて」 (2015年6月9日)

第24回 「プロダクトバイプロセスクレームの最高裁判決について」 (2015年7月14日)

第25回 「Karakuriからイノベーションへ」 (2015年8月17日)

第26回 「今話題の著作権について」 (2015年9月18日)

第27回 「著作権により保護される著作物とは?」 (2015年10月22日)

第28回 「TPPの知的財産分野への影響」 (2015年11月13日)

第29回 「これで良いのか知財教育」 (2015年12月14日)

第30回 「知財教育2」 (2016年1月15日)

第31回 「職務発明制度改正」その1 (2016年2月10日)

第32回 「職務発明制度改正」その2 特許法第35条第4項の解説 (2016年3月11日)

第33回 「職務発明制度改正」その3 「特許法第35条第5項の第6項における指針(案)を踏まえた解説」 (2016年4月19日)

第34回 「職務発明制度改正」その4 特許法第35条第5項の解説 (2016年5月18日)

第35回 「大幅な効率化のための職務発明規定の一例」 (2016年6月24日)

第36回 「御社の営業秘密管理は大丈夫ですか?」 (2016年7月22日)

第37回 「「夏休み」弁理士会活動のPR」 (2016年8月23日)

第38回 「山口大学の知財活動」 (2016年9月26日)

第39回 「取扱説明書の保護を考える」 (2016年10月18日)

本谷 孝夫(ほんや・たかお)

本谷国際特許事務所 所長(弁理士)
℡ 03-6820-8285
『特許等知的財産に関する無料相談を実施中です。
お気軽にご相談ください』
https://honyasama.wordpress.com

略歴 日産自動車㈱で30年近く特許業務に従事
   その後旭精工㈱で知財の責任者として活躍
   (旭精工㈱は、平成22年に特許庁知財功労賞を受賞)
   平成24年11月事務所を開設。

本谷弁理士
  • 電子認証局会議
  • 株式会社日本電子公証機構 認証サービス iPROVE
プライバシーマーク
このページの先頭へ戻る