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コラム概要

第11回 新しい商標とは?(第1回)                      2014年06月03日

 今まで、特許及び意匠について思うところを書いてきましたが、商標は不得手だと思われているのではないかと邪念が生まれてきましたので、この辺りで商標について述べたいと思います。今回は来年度からの施行が予定されている新しい商標を解説し、次回は商標についての弊職の思いを述べさせて頂きます。

 政府は、新しいタイプの商標を登録する等の法改正をすることを3月11日に閣議決定しました。下図1において、黄色着色国が既に新しい商標の登録を認めている国です。これより明らかなように、我が国は先進国の中では新しい商標の保護について後進国に成り下がってしまいました。そこで、経済のグローバル化にも対応するため、新しい商標を登録出来るように法改正に取り組んでいます。

 (図1)現時点では、中国も黄色です

 下図2に示すように、我が国の企業も、新しい商標の登録を認めている外国に於いてこの制度を活用しています。このように我が国においても新しい商標は需要があります。

 (図2)

 出所:図1及び図2とも特許庁第25回商標制度小委員会 議事次第・配布資料より

 では新しいタイプの商標とはどの様な商標なのでしょうか?

 現在、商標法においては、文字、図形、記号、立体的形状、若しくは、これらの組合せ、又は、これらと色彩の組みあわせと規定され、視覚性及び静止性が要求されています(以下「伝統的商標」という。)。今回の法改正によって、従来の伝統的商標に加え、以下の5つの要素の何れかを備える商標が登録可能になります。また、新しい商標の出願時に要求される要件は、図表1及び2をご参照下さい。

 では、新しい商標の登録事例の紹介と共に、登録要件・権利行使時の懸念について考察致します。

1、視覚で認識できる商標

 (1)「動き」

 「動き」の商標は、図形等が時間によって変化して見える商標である(例えば、テレビやコンピューター画面等に映し出される動く平面商標や、動く立体商標等)。

    例 映画製作会社である20世紀フォックス社の冒頭に出てくるやつです。

      米国登録第 1928423 号 指定商品: 第 9 類 映写フィルムなど

      商標権者:20TH CENTURY FOX

 (考察)ソフトウエアや家電、車等のディスプレイのスタート画面に採用されそうです。識別力があれば著名性も不要と思われるので、新規参入者も権利取得し易いと考えます。類否判断もし易そうです。ただし、1シーンのみ同一の場合、類似するのでしょうか?その一シーンが署名であれば、類似の範囲になると考えます。出所の混合の恐れがあるからです。しかし、そのようなケースは極めて希でしょう。

 (2)「輪郭のない色彩」

 「輪郭のない色彩」の商標は、図形等と色彩が結合したものではなく、色彩のみからなる商標です。「輪郭のない色彩」の商標は、複数の色彩を組み合わせたものと、単一の色彩によるものがあります。

    例 ルブタン社のレッドソールというやつです。

      米国登録第3,361,597号  第25類 指定商品:women's high fashion designer footwear

      商標権者:Christian Louboutin

 (考察)色彩は基本的には選択物であるので、原則、権利化できず、著名性を獲得した場合に商標登録されると考えます。類否判断は難しいと思われます。運動靴の底を赤色にした場合、靴全体を赤にした場合、類似商標になるのでしょうか?商標権者の商品との出所の混同可能性が有る場合に類似商標とすべきであると考えます。

 (3)「ホログラム」

 「ホログラム」の商標は、物体にレーザー光などを当て、そこから得られる光と、もとの光との干渉パターンを感光材料に記録し、これに別の光を当てて物体の像を再現する方法及びこれを利用した光学技術を利用して図形等が映し出される商標です。

    例 クレジットカード表面のキラキラ光るやつです。

      米国登録第 3045251号 第 36 類 クレジットカードサービス

      商標権者:AMERICAN EXPRESS 

 (考察)視る角度によって、異なる見え方がするので一の見え方が同じである場合、類似商標になるのであろうか?類否判断が難しそうです。

 (4)「位置」の商標

 「位置」の商標は、図形等の標章と、その付される位置によって構成される商標である。

    例 レノボ(旧IBM)のキーボードの中央に配置されている赤いやつです。

      米国登録第 2363544 号 第 9 類 カーソルの操作器

      商標権者:IBM 社    

 (考察)アディダス社の三本線も登録可能と考えます。位置の商標は本来的には技術的思想であると考えます。その意味で登録要件として著名性が必要と考えます。

2、視覚で認識できない商標

 (1)「音」の商標

 「音」の商標は、音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標です。

    例 「ヒサミツ」や「ウインドウズ」のスタート時に流れるメロディーです。

      CTM 登録第 2529618 号 指定商品:第 5 類 薬剤

      商標権者:久光製薬株式会社

 (考察)自然界における水の流れる音は登録されるのでしょうか?今は殆ど聞く機会が無くなった夜泣きラーメンのラッパのメロディーは登録されるのでしょうか?何れも登録されないと考えます。普通に用いられる商標だからです。また、類否判断が難しそうです。メロディーの一部が同一又は類似である場合、類似商標になるのでしょうか?また、米国ではハーレーダビットソンの排気音が商標登録されていますが、90度V型二気筒エンジンで有れば、基本的には同様の排気音になり、本来的には技術的思想を保護することになります。その意味で音の商標が登録されるためには、著名性が必要と考えます。

第1回以上


 

第1回 知財界における2015年問題について (2013年8月5日)

第2回 米国における登録前情報提供制度の活用 (2013年9月2日)

第3回 意匠再考(1)部分意匠制度について (2013年10月1日)

第4回 意匠再考(2)関連意匠制度について (2013年11月6日)

第5回 中小企業の強みを生かそう (2013年12月3日)

第6回 「元気印」のキーワードと中小企業支援策の活用事例 (2014年1月9日)

第7回 産業財産権によって広範に保護したいときどうしますか? (2014年2月13日)

第8回 意匠登録出願へ出願変更を考慮した特許出願の留意点 (2014年3月4日)

第9回 中国においてグラフィカル・ユーザー・インターフェースの意匠が登録可能!! (2014年4月1日)

第10回 最近の進歩性判断の傾向 (2014年5月8日)

第12回 商標に何を託しますか?(第2回) (2014年7月10日)

第13回 「温故知新」従来技術を活用したイノベーションへの挑戦 (2014年8月7日)

第14回 「中国においてビジネスをする際に知財面において最低限必要なこと」 (2014年9月9日)

第15回 「異議申立制度の復活に乾杯」 (2014年10月7日)

第16回 「意匠制度の国際化」 (2014年11月5日)

第17回 「意匠の国際出願の活用について」 (2014年12月9日)

第18回 「商品・役務のネーミングについて」 (2015年1月8日)

第19回 「職務発明制度について」 (2015年2月5日)

第20回 「秘密情報の保護について」 (2015年3月10日)

第21回 「秘密情報の保護についてⅡ」 (2015年4月8日)

第22回 「自撮り棒」 (2015年5月14日)

第23回 「日本弁理士会による知財キャラバンについて」 (2015年6月9日)

第24回 「プロダクトバイプロセスクレームの最高裁判決について」 (2015年7月14日)

第25回 「Karakuriからイノベーションへ」 (2015年8月17日)

第26回 「今話題の著作権について」 (2015年9月18日)

第27回 「著作権により保護される著作物とは?」 (2015年10月22日)

第28回 「TPPの知的財産分野への影響」 (2015年11月13日)

第29回 「これで良いのか知財教育」 (2015年12月14日)

第30回 「知財教育2」 (2016年1月15日)

第31回 「職務発明制度改正」その1 (2016年2月10日)

第32回 「職務発明制度改正」その2 特許法第35条第4項の解説 (2016年3月11日)

第33回 「職務発明制度改正」その3 「特許法第35条第5項の第6項における指針(案)を踏まえた解説」 (2016年4月19日)

第34回 「職務発明制度改正」その4 特許法第35条第5項の解説 (2016年5月18日)

第35回 「大幅な効率化のための職務発明規定の一例」 (2016年6月24日)

第36回 「御社の営業秘密管理は大丈夫ですか?」 (2016年7月22日)

第37回 「「夏休み」弁理士会活動のPR」 (2016年8月23日)

第38回 「山口大学の知財活動」 (2016年9月26日)

第39回 「取扱説明書の保護を考える」 (2016年10月18日)

本谷 孝夫(ほんや・たかお)

本谷国際特許事務所 所長(弁理士)
℡ 03-6820-8285
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https://honyasama.wordpress.com

略歴 日産自動車㈱で30年近く特許業務に従事
   その後旭精工㈱で知財の責任者として活躍
   (旭精工㈱は、平成22年に特許庁知財功労賞を受賞)
   平成24年11月事務所を開設。

本谷弁理士
  • 電子認証局会議
  • 株式会社日本電子公証機構 認証サービス iPROVE
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